遺産額が少ないほど相続争いは起こりやすい 普通の人こそ「遺言書」が必要な切実な理由

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

先日、ある会合で60~70代の女性の先輩方数名と一緒になり、相続が話題になりました。そして、異口同音に「主人の親の相続から夫婦仲がおかしくなった」「あのときの悔しさは今でも胸につかえている」「主人の兄弟とあれ以来ギクシャクしている」と話していたのです。

彼女たちは、舅姑によくつかえ、夫の兄弟家族の誰よりも老後の面倒をみました。その気持ちを汲み取った親御さんも生前、「あなたはよくやってくれた。あなたにしっかり財産を残しておくからね」と約束してくれたものの、実際は口約束だけでそうなることはありませんでした。

葬儀後の話し合いの席で夫の兄弟に「平等」を訴えられ、また、法的にもただただ同意するしかありませんでした。その背景には、日本には「遺言書」を書くという文化が定着しておらず、率先して書くのは一部の資産家のみだからです。また、さまざまな法律のしばりを理解しておらず、なんとなく放っているうちに問題がこじれて、裁判に持ち込まれるケースが増えているのです。

裁判所の資料によると、全裁判所での裁判自体は2011年(平成23年度)と2015年(平成27年度)を比較すると、約406万件から約353万件に減少しています。しかし、離婚と相続関連の家庭事件は2011年(平成23年度)の約81万件から、2015年(平成27年度)には118.9%増の約97万と増えています。

認知症になったら亡くなるまで財産は動かせない

実は私自身、伯母の相続問題で嫌な想いをした経験があります。亡き母の姉にあたる伯母は結婚をせず、伯母の母(私の祖母)を看取ったときに、自宅を相続していました。田舎ですが、結構な広さの土地のほかに、田畑があります。

その伯母が昨年老人ホームに入所、さまざまな手続きをするなかで、伯母の兄弟である叔父の1人がその財産を相続しようとしていました。しかし、すでに認知症になってしまった伯母の資産を動かすことはできず、それを私が叔父に伝えたところ、なかなか理解をしてもらえませんでした。

伯母との会話は成立しましたが、自分の住所・名前・生年月日を直ぐにいえず、「時すでに遅し」で、相続のための診断書を書いてもらうことはできませんでした。認知症の場合は、その人が亡くなるまで基本的には財産を動かすことはできません。

次ページ親の面倒をみていない兄弟にも等しく相続すべきか
関連記事
トピックボードAD
マーケットの人気記事