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日本の知識人が「いつも中国を見誤る」理由 問題は「近代日本の中国観」にある

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  • 岡本 隆司 早稲田大学教育・総合科学学術院教授
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なぜ中国の「運動」は、「言葉だけ」になってしまうのか。日本はそのメカニズムを「知らず」に、中国と干戈(かんか)を交えて、そして敗れ去った。それが厳然たる歴史である。それはまた、日本人の中国観の特質がもたらしたものでもあった。

現代も「空言」を生み出す中国

かつての戦争ばかりではない。戦後もやはり、そうである。石橋が代表する思考の枠組みは、大正時代から連綿と受け継がれている。

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たとえば、かの文化大革命。おびただしいスローガン・「言葉だけ」が踊って、残ったのは破壊のみ、何も生み出さなかった。これに対しても、多くの日本人が社会主義・革命という「言葉だけ」に引かれて、称賛を惜しまなかった。

同じ思考の型からくる「妄動」だと言ってよい。逆に中国社会の「不可解」さを真っすぐ見つめ、熟考しようとする試みは、ほとんど黙殺されてきた。

中国の歴史・社会を深層から見つめるはずの学問研究も、決してその例に漏れない。いかに現実・史実・資料と背馳する外来理論・既成概念・イデオロギーにとらわれてきたか。東洋史学のわが同業とて、大きな違いはない。来し方を振り返って、やはり憮然たるものがある。

大国化した中国は、一衣帯水の近きにある。今ほど中国を「知らず」には済まない時代もあるまい。

尖閣などの「領土」問題、台湾・香港など「一つの中国」、あるいはAIIB、「一帯一路」構想などなど、日本にもかかわる目前の問題に直面するわれわれは、やはりその「言葉だけ」にとらわれていまいか。

「空言」を生み出す中国社会のメカニズム。それをありのままにとらえることの難しさ、大切さは、石橋はじめ、険しい日中関係に苦悩した先人たちが、身をもって示してくれた。

われわれはそれをかみしめながら、ありのままの中国を見つける営みを地道に続けなくてはならない。またそんな営みを冷遇することのない社会を構築する必要がある。

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