宇宙飛行士に見る、"頂点到達後"のキャリア 夢を実現した後のキャリア、どうする?

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日本では宇宙を目指すことや宇宙飛行の経験が、国民にポジティブにとらえてもらえるので、宇宙飛行士のモチベーション維持につながる。だが米国ではそうでない。

もちろん、「飛んだ人」と「飛んでない人」、つまり「1かゼロか」の差は大きい。しかし2回、3回と飛ぶことがキャリアにとってそれほど大きな差にならず、プラスにならないと考える人が多い。だから1回飛べばNASAを去る。転職文化の米国ではなんら特別なことでないというのだ。

「1996年にNASA宇宙飛行士養成クラスで一緒に訓練を受けた同級生のほとんどが民間企業に転職し、いい仕事をしています。活躍の場がNASAから民間に移っている」(野口)。

しかし、NASAと言えば宇宙を目指す世界中の誰もが目指し、そこで働いてみたいと思う目標であったはずだ。

「間違いなくアポロ計画の頃は『輝けるNASA』の時代で、知識や経験の蓄積があり、働く人のモチベーションは高く、つねに挑戦的な仕事があったと思います。でもそれは過去のこと。今はNASAで培ったリソースと技術力が、そのまま民間に移行しているのです」

さらに驚くのは野口飛行士がこう表現したとき。「ぶっちゃけて言えば、『NASAは高速道路局』のようなものですね。宇宙にインフラを作っている公共機関。そこに極端なモラルとか技術レベルを求めるほうがおかしい」

場が宇宙というだけで、州と州を結ぶ高速道路を作っている高速道路局と変わらない。予算もそれほど大きなわけではない。だから挑戦の場を求める人たちは、民間に流れる。さらに今、訓練中の宇宙飛行士たちも飛行後になんの仕事に就きたいか、キャリアアップのために何をすべきかを、必死に考えているというのだ。

「NASA=高速道路局」と聞いて驚きつつ、こんなふうに一言でばっさり切ってくれるのが野口飛行士だとうれしくなる。ほかの日本人宇宙飛行士は、口が裂けても言えないだろう。

誰よりも早く時流を読みとり、その時流に乗って新しい価値を生み出す。そうした野口飛行士の特徴が顕著に現れたのが、宇宙滞在時に始めて爆発的な反響を呼んだツィッターだ。

宇宙ツィッターで見せた突破力

宇宙飛行士が宇宙からツィッターでつぶやくのは、当たり前に行われている。だが、かつては宇宙飛行士が所属機関の検閲なしで文章を出すことはありえなかった。そんな状況で2009年に宇宙からのリアルタイムツイッターを始め、瞬く間にブレイクさせたのが、野口飛行士だ。

打ち上げ前はISSでインターネットが常時使える状態ではなく、やると決めていたわけではなかった。それが野口の宇宙滞在中にネットが常時使えるようになり、試しに投稿してみると、想像以上に反応がよかった。CNNが「これはスゴイ!」と第1報を伝え、野口がツィートした写真を見た新聞社から、「あの写真がほしい」となどいう反応がNASAに殺到。オバマ大統領と宇宙飛行士の交信でも話題にされるほどになる。

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