「老人」という言葉を使うと差別にあたるのか 最近は高齢者という言葉のほうが多くなった
興味深いのは同会の会員区分だ。
ジュニア会員 60歳~74歳
サポート会員 20歳~59歳
かつては60歳以上が高齢者、現在はWHO(世界保健機関)等が65歳以上を高齢者としているが、ここでは75歳以上がシニアであり、74歳まではジュニアなのだ。
同HPによれば、日野原氏はかねてより、半世紀前に国連で定めた「65歳以上を老人」とする捉え方はすでに実態に即しておらず、老人は75歳以上として、自立して生きる新しい老人の姿を「新老人」と名づけたという。
「新老人の会」事務局によれば、現在の会員数は約6000人。75歳以上のシニア会員は全体の過半を占めており58.5%、60歳から74歳のジュニア会員が31%、20歳から59歳までのサポート会員は10.5%の年齢構成だという。ちなみに100歳以上の会員数は18人いるそうだ。
元気な「高齢者」が増加したという現状
一方、「老いる」という言葉があるように、この字には「年をとって心身の働きが衰える」いう意味もある。平均寿命が延び、アクティブシニアなる言葉がマーケティング用語として登場しているように、同じ年齢でも過去に比べたら元気な人が圧倒的に多いのは事実だ。
要するに、自らを「老人」の概念で括られることを嫌がる元気な高齢者が増えたことが、この言葉を遠ざけ、差別的とみなされはじめているということだろう。制度や施設の名称に使っても問題ないが、当事者に対して使うのは問題だと思う人が多くなっているようだ。
高齢化社会の進展とともに女性の社会進出が進んだことが現代社会の特徴だ。したがって、男女で分ける言葉は急速になくなっている。
看護婦は看護師、保母は保育士、保健婦は保健師、スチュワーデスはキャビンアテンダント……。女性の仕事であったものがそうではなくなったからだが、逆に男性の仕事とみなされていたものが女性に解放されてきても日本語では言葉の表記の問題が生じないのは興味深い。
警官、消防士、運転手、運転士、車掌、機長、操縦士、医師……。どれも男女とも使って違和感はない。逆に英語では男の仕事とされる分野ではmanが多用されているので問題が生じている。
議長=chairmanは最近ではchairpersonだ。しかし、呼びかけには語呂がよくない。以前、OECD(経済協力開発機構)の会議に出席したとき、女性が議長だったことがある。なんと呼ぶのか注目していたら、madam chair(マダム チェア)と呼ばれていて、なかなか良いと思った。
社会構造の変化にともなって、人々の意識も変わり、それが属性の名称への違和感を生じさせているのだろう。
「年をとる」という言い方を変えてはどうかという意見を聞いたことがある。「とる」というと何かが減っていくような感じがするので、「年をいただく」がよいのではということだった。まさに知識、経験、知恵を年ごとに重ねていくということだろう。
高齢化社会は悪いことばかりではないはずだ。年を重ねた賢者が活躍できる社会であってほしい。
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