和歌山の小さな織物会社に世界中から熱視線

高級ブランドがフェイクファー技術を羨望

フェイクファーを使ったファッションアイテムを使う有名ブランドが増えてきている。写真は岡田織物が独自に作った製品(筆者撮影)

和歌山県の高野山のふもと、JR和歌山線の高野口駅の近くに世界のファッションブランドから注目される織物会社、岡田織物がある。ファッション界で動物保護への取り組みが広がる中、動物の毛皮(リアルファー)を扱わないブランドが増えている。代わって、人工の毛皮(フェイクファーあるいはエコファー)の需要が増しているのだ。

同社は、天然に近い良質のものを開発し、リアルファーを使わなくても毛皮の風合いを実現して、世界でその先頭を走る織物メーカーなのだ。しかし、現地を訪ねると、従業員わずか3名、売上高1億円規模の山あいの小さな織物メーカー。どこにその力があるのかと疑うほどだった。

高野口はその名の通り、かつては高野山参詣の入り口で、ここで1泊して高野山に向かう宿場町だった。

駅前には古い時代のままの旅館が残されていた(筆者撮影)

その象徴として現在、駅前に旅館「葛城館」の建物だけが残っている。江戸時代末期にはこの地に綿織産業が興った。明治期に入って、ヨーロッパからシェニール織りの技術がもたらされた。

シェニール( Chenille )とはフランス語で毛虫の事。両面パイルの織物である。二度の製織工程で作られ表も裏も同じ多色柄が特徴だ。その技法を基礎として毛足のある生地作りが高野口地域で栄えた。

地域の売り上げ規模は全盛期の10分の1以下に縮小

昭和57年頃にはこの地には384社もの織物メーカーがあり、全体で約660億円もの売上高があった。だが、現在は60社をきるまで急減、売上高は60億円を下回り、全盛期の10分の1にまで低下している。もちろん岡田織物も売上規模は縮小傾向にある。

その状況下でも、岡田織物はプラダやシャネル、ルイ・ヴィトンといった欧州の高級ファッションブランドから生地の供給を求められているのだ。

岡田次弘(つぐひろ)社長。1961年10月生まれ。1991年に経営難に陥った会社を継いで現在の岡田織物を立ち上げ、代表取締役社長就任。同社ではジャパンエコファーという商標も取得している(筆者撮影)

そのきっかけを岡田社長は、「2002年に同業者に誘われてニューヨークの展示会に出展したところ、反応がよく、生地を輸出することになり、それが今も続いている」という。

現在、同社が供給する生地はフェイクファーだけ。いわゆる特化型のメーカーだ。動物保護の流れも追い風となり、長年養ってきたパイル織物の技術が世界的に評価されてきているということだ。

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