和歌山の小さな織物会社に世界中から熱視線 高級ブランドがフェイクファー技術を羨望

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実際、高級ブランドが次々と毛皮の使用をやめている。「グッチ(GUCCI)」、「ヴェルサーチ(Versace)」、「フルラ(FURLA)」、「マイケル・コース(MICHAEL KORS)」、「アルマーニ(Armani)」、「ヒューゴ ボス(HUGO BOSS)」などが今後は毛皮を使用しないと宣言している。

特に、2017年秋にグッチが2018年春夏コレクションからリアルファーを使用しないというファーフリー宣言をしたことは業界内でも話題になった(毛皮を廃止したブランドリストはこちらより。NPO法人動物実験の廃止を求める会HP)。

岡田織物にしかできない技術

そうした中で岡田織物に注目が集まっているのだ。それはほかにはない技術があるからだ。動物の毛は、短い毛と長い毛が交互に生えるという構造で立体的になっているが、中国製フェイクファーの多くは毛の長さが均一だ。

毛の長さが同一でないため、動物のようなリアルな毛並みになっている(筆者撮影)

しかし、岡田織物のフェイクファーはリアルファーの毛並みを忠実に再現しているため、立体感があり手触りがなめらかだ。

さらに、天然の毛皮は根元が太く、毛先が細い毛が存在しているが、化学繊維では同じ太さの繊維しか作ることができなかった。

そこで、三菱レイヨンと新素材「プロパール」を共同開発し、特殊加工によって毛先を割ることで根元と毛先の太さを変化させ、天然の風合いを実現した。

また、生地の裏側は毛が抜けにくいように薬剤で固めるが、中国製のフェイクファーなどは安価な薬剤を使用しているため硬い。

同社では工夫を重ね、硬くならずに毛が抜けにいという特殊な薬剤を開発した。実際に生地を触ってみると、綿やポリエステルなどの薄い生地に本当の毛のようにアクリル製の毛がぎっしり生えている。

手前側が加工前のもの。さまざまな工程を経て奥側のようなフェイクファーとなる(筆者撮影)

ここで注目したいのは同社を支える日本の製造業の層の厚さだ。

たった3人の岡田織物が国際ブランド向けにも商品生産・出荷できるのは完成までの40もの工程を高野口の同業7社と分業しているからだ。

長年培ってきた高野口全体の織物技術の高さがその品質を支えている。

また岡田織物はその名の通り糸を織るメーカーであり、繊維素材メーカーではないため、三菱レイヨンとの素材の共同開発による成果も大きい。

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