「ゲーム依存の子」を救う方法は結局あるのか その症状はコカイン中毒にも似ている
どうすればプレーヤーをとりこにできるか――。ゲーム業界はそのために、予測アルゴリズムや行動経済学を駆使して知恵を絞っている。開発者にとって最大のほめ言葉は、「一度始めたらやめられなかった」だろう。
だが今、それはゲーム依存という病気かもしれないと、世界保健機関(WHO)が警鐘を鳴らしている。6月半ばに発表された、WHOの『国際疾病分類』改訂案は、「ゲーム症」というカテゴリーを新たに設けている(正式な採択は来年になる見通し)。
コカイン中毒とそっくりの症状
現代人がソーシャルメディアやオンラインゲームに費やす時間が問題になるなか、ゲームが健康に与える影響にも関心が集まっている。WHOが新たなカテゴリーを設けたことで、熱狂的なゲーマーや家族が治療に前向きになり、セラピストが増え、ゲーム症をカバーする保険商品が開発される可能性もある。
「専門家が患者を治療して、報酬を得られるようになるという意味で、われわれの手を縛っていたものが取り除かれることになる」と、ラトガーズ大学医科大学院の精神科を率いるペトロス・レボウニス博士は語る。「もう、うつだとか不安症だとかいって、この問題をうやむやにする必要はなくなった」。
アメリカの業界団体エンターテインメントソフトウエア協会(ESA)によると、世界のゲーム人口は約26億人。このなかにはアメリカの全世帯の3分の2も含まれる。世界のゲーム市場の成長は今後も続き、3年後の市場規模は1800億ドルに達する勢いだ。現在大ヒット中のゲーム『フォートナイト』は、4月の売上高が3億ドルと報じられた。
ゲーム業界は、「ゲームには教育的、治療的、そして娯楽的価値」があるとして、WHOの指定には「大きな欠陥がある」と主張してきた。
だが、ビデオゲームの依存性は、昔から指摘されてきた。実際、メンタルヘルスの専門家らは、自制心を失ったゲーマーが増えていると指摘する。「私のところに来る『キャンディークラッシュ』依存の患者は、コカイン中毒者とそっくりの症状を示している」と、レボウニスは語る。「生活が荒れ、対人関係は破綻し、健康も損なっている」。
最近ゲーム依存の治療に注目が集まっているが、保険が適用されることはめったにないし、専門医の認定もほとんどない。キャンプやリハビリ施設での治療プログラムは増えてはいるが、高額なうえに成功する保証もない。