「ゲーム依存の子」を救う方法は結局あるのか その症状はコカイン中毒にも似ている
そもそも専門家が少ないという問題もある。
アリゾナ州ツーソンで土産物店を営むキム・デブリーズは2年前、当時22歳の息子のためにゲーム依存治療の専門家を探し始めた。息子はゲームに夢中になって、大学を中退し、仕事も見つからずにいた。食事もまともにとらず、クラッカーなどスナック菓子をつまみながら、ヘッドセットをつけて1日16時間もコンピューターの画面をのぞき込み、見知らぬ誰かと『リーグオブレジェンズ』の攻略法を話し合うといった具合だ。
先行するアジア諸国の対策
デブリーズは、息子の強迫観念にも似たゲームへの没頭ぶりを理解してくれる専門家を探した。でも、お手上げだった。「そんな専門家は見つからなかった」。
彼女は今、息子に夜11時以降のゲームを禁止している。「息子の部屋の前を通ったとき、キーボードを叩く音だけがカタカタ聞こえてきて、ゾッとすることがある」。デブリーズの息子は取材を拒否した。
ゲーム業界の成長のスピードに、医療研究は追いついていない。
2009年のある研究論文は、若者の約9%がゲーム依存だと指摘しているが、ゲームが進歩して、もっとソーシャルになり、もっと携帯性が高まった今は、もっと多くの若者がゲームに依存しているはずだと、多くの専門家は考えている。
「予想もしなかった巨大な津波が押し寄せている」と、ロサンゼルスに拠点を置く支援団体「ゲーム・クイッターズ」の設立者キャム・アデアは言う。
だが、メンタルヘルスの専門家の間では、ゲーム症は独立した疾病ではないという見解もある。うつや不安症といった、より一般的な病気の一症状または副作用だというのだ。
「ゲーム症の治療法は明らかになっていない」と、コネチカット大学のナンシー・ペトリ教授(心理学)は語る。「まだとても新しい現象だから」。
アジアでは違う。ゲームとゲーム依存の最先端であるアジアには、自制心が利かないほどのゲーム依存を撲滅するため、専門のリハビリ施設が何年も前から存在する。韓国では、深夜12時から朝6時まで青少年のアクセスを遮断することがゲームのポータルサイトに義務づけられているし、一部のゲーム依存治療施設は政府の助成を受けている。
それなのにアメリカでは、ケアを提供してくれる場所を探すだけでも、フラストレーションがたまることが多い。