日本が身構えるべき「米中通貨安競争」の恐怖 デフレ不況に逆戻りするかもしれない
さて、中国は追加関税という形はとらず、人民元安により国内経済への悪影響を避けようとしていると思われるのだが、一方で、アメリカ国内向けに「不当な中国」を懲らしめていることをアピールしなければならないトランプ政権は、やられたらやりかえさなくてはならない、と考える。
中国が通貨安政策を採るならば、同じく通貨安政策で応じようとするだろう。実際、トランプ大統領は20日に「中国とEU等の国々は為替を操作している」とツイッターに投稿し、前日の19日にはテレビでFRBの利上げ方針とドル高傾向に不満をあらわして、為替相場に対して「口先介入」を始めたようだ。
通貨安競争となれば中国が有利
中国の通貨安政策に対して米国が同じく通貨安で応じるとなれば、米中貿易摩擦は通貨安競争という新たな局面を迎えることになるが、関税のかけあいでは輸入が多いアメリカに有利とみられたものの、通貨安競争では中国が有利となる。
国際金融のトリレンマ(自由な資本移動、固定相場制、独立した金融政策の3つを同時に達成することはできないという理論)を考えれば、自由な資本移動を制限する中国は為替レートを操作できるが、自由な資本移動も独立した金融政策も放棄できないアメリカは、為替レートを自由に操ることはできない。
むろん介入や金融政策によって相場を多少は動かすことができるが、アメリカは巨額債務国であり、通貨安傾向が鮮明となれば資本が逃避し金利は高騰、国内経済が打撃を被るので、極端な通貨安政策を採用することはできないだろう。
それでも通貨安競争が始まる可能性がある。もし、そうなったとしたら、その先はどうなるのだろうか。
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