日本が身構えるべき「米中通貨安競争」の恐怖

デフレ不況に逆戻りするかもしれない

7月12日に出された中国商務部の声明を読むと、アメリカの貿易赤字の主因をアメリカの貯蓄率の低さに求めるなど、過去に中国が国際社会に対してなにかを訴えるときに見られた言い逃れ的、もしくは自己中心的な理論ではなく、正論といっていい内容である。

対抗関税措置を講ぜず、正論を述べ、WTOへ提訴すると述べることにより、「国際的なルールを遵守する正しい国」であるとのアピールをしているようにもみえる。

2年前に中国とフィリピンとのあいだで争われた南シナ海の領有権問題について常設仲裁裁判所が下した判決を「紙屑」と言い放った国が、「国際的なルールを遵守する正しい国」のはずがない、と思う人も多いだろう。

たしかに、「隣国が正しい国に変わったのならば結構なこと」と手放しに喜ぶのは早計だ。

覇者は「正しい国」でなければならない

多くの中国人は歴史を好み、なかでも国の指導者たちはそうだ。中国の春秋時代(前770年−前403年)は「覇者の時代」と呼ばれ、斉の桓公、晋の文公、楚の荘王らが力の衰えた周王室に代わって天下を経営した。覇者は他国を圧倒する強大な国力を持っており、争いを防ぐためのさまざまなルールを定め、構成国を経済的・軍事的に守護した。

中国は、現代の国際社会における「覇者」を目指すとは決して公言しないものの、「一帯一路」構想やアジアインフラ投資銀行(AIIB)の設立などは覇者への歩みを匂わせている。中国のアメリカに対する姿勢も、覇者に向けた流れのなかで起きたことと捉えると、腑に落ちる。

覇者となるための条件とは何か。覇者には国際社会の信認が必要であり、ドナルド・トランプ大統領が率いるアメリカが自国第一を掲げて他国の不利益を顧みない発言と行動を続けるなかでの「正しい国」アピールは一層効果的と考えているのかもしれない。

孟子は「力を行使し仁者のふりをするのが覇で、覇は必ず大国でなければならない。徳をもって仁政を行うのが王で、王は大国である必要はない」と説いている。覇者の善行は仮のものであり、その実は武力を背景にして他国を圧する。中国が覇者たらんとしているのであれば、隣国としては警戒の目で見ておかなくてはならない。

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