日本が身構えるべき「米中通貨安競争」の恐怖 デフレ不況に逆戻りするかもしれない
アメリカは、中国による知的財産権侵害などの行為を問題視している。7月6日、その中国を制裁するため、アメリカは中国からの輸入品340億ドル相当に対して25%の関税を課すことを明らかにした。
中国は、直ちに同規模の関税を発動してこれに対抗した。続いて、その4日後の7月10日、アメリカは2000億ドル分の輸入に10%の追加関税を課す方針を明らかにし、その対象品目リストを公表した。
世界は、中国が再び同規模の関税で対抗し、米中貿易摩擦の火はいよいよ燃え上がり貿易戦争のような事態に発展する、と緊張した。
中国は「為替レートの調整」で応じた?
ところが、中国は肩透かしを食らわすように対抗関税は表明しなかった。7月12日、中国商務部はアメリカの不当を整然と並べ立てる声明を公表、WTO提訴の方針を明らかにするにとどめた。
ただ、その裏で人民元の対ドルレートでの下落が進行していた。米中両国が340億ドルの関税をやりあった7月6日からの2週間で、3%近くの人民元安となっている。
7月7日の拙稿『歴史に学ぶ「米中貿易摩擦」の行きつくところ』では、アメリカの2000億ドルの追加関税に対し中国は報復関税といった明示的な形はとらずに為替レートの調整で応じる可能性があることを指摘したが、いまのところ事態はそのように進んでいるようにみえる。
中国が追加関税で応じないのは、アメリカからの輸入額は2000億ドルを大きく下回るので対抗したくてもできないのだ、と論じられることが多いようだ。しかし、それだけが理由なのだろうか。
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