苦境ジャニーズが各局に仕掛けた全方位営業 テレビの「Jr.」大量露出は先行投資か、忖度か

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ジャニーズ事務所の戦略をビジネス的な視点から、プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント(以下、PPMに略)の理論に当てはめてみましょう。PPMとは、複数の事業や商品を抱える企業が、「長年安定した収益を上げるには、どのような戦略で、どのように資金や人材を配分していくか」を検討するものです。

事業や商品を横軸に市場占有率、縦軸に市場成長率を設定した4つのマトリクスに落とし込み、(1)問題児(育成が必要な段階)、(2)花形(現状維持する段階)、(3)金のなる木(投資を抑え回収の段階)、(4)負け犬(撤退すべき段階)を分析していきます。

嵐やTOKIOで得たおカネをJr.に投資

たとえば、「金のなる木」で得た資金や人材を市場成長率の高そうな「問題児」に投資し、「花形商品」に育成するのが基本戦略。これをジャニーズ事務所に置き換えると、「金のなる木」のTOKIO、V6、嵐らで得た資金や人材を「問題児」のジャニーズJr.に投資して「花形商品」にしていくという段階なのでしょう。

その「問題児」もジャニーズJr.のグループすべてに投資するわけではありません。ファーストステップとして各局への全方位営業を仕掛けながら、「どのグループをどうデビューさせるか」「国民的アイドルになれそうなグループは重点営業しよう」などと模索している最中なのです。

ただ、戦略としてのPPMは、ビジネスにおける基礎中の基礎であり、1970年代に生まれた古いものであるなど、一般の人々にバレバレの戦略。同様にジャニーズ事務所の戦略も視聴者にバレバレであり、ファン以外の人々には「またゴリ押しをしている」などと不評を買うリスクが高いとも言えます。

ちなみに他の芸能事務所も、「金のなる木」で稼いだお金を「問題児」のレッスン費用などにあてるなど、PPMをベースにした経営をしていますが、ジャニーズ事務所ほど多くの「問題児」を抱え、全方位営業を仕掛けることはありません。

その分、「いかに『花形商品』『金のなる木』『負け犬』で稼ぎ続けるか」を重視していますが、タレントの休養や引退で収益が激減する大きなリスクをはらんでいるとも言えます。

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