同様に、職場においてテクノロジーが人事担当者の教育や人材開発のアプローチに与える影響も、指数関数的に増しています。イギリスの能力開発・教育アドバイザーのケン・ロビンソン氏は、「教育パラダイムの変化」と題されたTEDトークの中で、「旧世代の労働力に代わる人材に育てるべく子どもたちを学校で学ばせていながら、教育アプローチは18世紀後半の方式から変わっていません」と指摘。「いまだに、既存の産業主義的な教育モデルに依存しているのです」。
ロビンソン氏は、さらに「問題なのは、従来のやり方のまま、未来に対応しようとしていること」だとし、「現在の教育制度は、(未来とは異なる)過ぎ去った時代を見据えて設計、考案、構成されたものです」と話しています。
社員のリテンションに必要なことは
一方で、社員の需要に応じた教育機会を提供する必要性も広く認識されつつあります。これは、現在の仕事を取り巻く環境にそぐわないスキルを広く浅く身に付けるよりも、実際に必要とされるスキルを習得することが必要だという考え方です。デジタル時代においては、学歴ではなく、スキルこそが人材の重要な資産となるのです。
優秀な人材をめぐる競争が激化する中、人事担当者は外部からの人材登用やリーダーの後継者育成、パフォーマンスの高い社員を見極め、さらにエンゲージメント強化に向けた新たな方法を模索しています。
米マーサーの「2017年グローバル人材動向調査」では、社員のサポートとリテンション(離職防止)のための人事の重点事項を6つ、定義しています。たとえば、「若手社員の管理職への登用」「発展途上市場と成熟市場間の人材の移動」「逆メンター制度(部下が上司に助言する逆方向の支援の仕組み)」の創成といったものです。
こうした施策は、リーダー人材の社内における人脈構築や、社員の「雇用される能力(エンプロイアビリティ)」を高めるといった継続的な学習支援に役立ちます。そして目に見える成果を伴う目標につながるのです。
また、ポテンシャルの高い社員を対象とした上級キャリア開発制度を設ける、キャリアの早い段階で組織を動かす職務に従事させる、企業における重要な機能を果たす職務につけビジネスに触れる機会を与える――といったことによって、社員は必要なスキルを身に付けやすくなり、結果的にリテンションにもつながります。
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