パガーニが1台数億円の車を売りまくる秘密 1992年創業の新興メーカーの緻密すぎる戦略

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そして、1992年、ついに自らの名前を用いた自動車メーカー、パガーニ・アウトモビリを設立。長年温めていた自前のデザインとエンジニアリングによるオリジナルカー、ゾンダを1999年に発表したのだった。

ゾンダF

2002年に限定399台で発売されたフェラーリ・エンツォが8000万円ほどであったにもかかわらず、新興メーカーであるパガーニがそれに匹敵する価格でゾンダを発表し、着実に売り上げを伸ばし続けている。現在では1台あたり3億円とも5億円とも言われる高価なモデルの注文がコンスタントに入っており、昨年の売り上げは前年比29%アップを記録したという。パガーニのビジネススタイルに対するフォロワーは数多く生まれたが、それに追いついて来る者は誰もいない……。それはいったいなぜなのだろうか……。理由は3つあると私は考えている。

少量生産にこだわり、顧客満足度を上げる

1つ目の理由は、手作りにより少量生産にこだわり、顧客満足度を上げることをモットーとしたことだ。パガーニは創立以来、ゾンダ、続くウアイラという2モデル、それらの派生車種たるワンオフ(特別注文モデル)で少数作り続けるという体制を続けている。

ウアイラ

「私は会社を大きくしようとはまったく考えていません。仲間と共に理想のクルマを作り続けることがすべてなのです」とオラチオが語るように、いくらたくさんのバックオーダーを抱えても、増産することなしに、数十名の従業員によって製造する体制は創立以来、まったく変わっていない。

従業員

各モデルには最新の素材やテクノロジーが導入され、少量生産にもかかわらず、工業製品としての安定したクオリティを備えるというパガーニならではのセールスポイントを生み出している。

現在のように複雑な電子デバイスなどが導入されている自動車は一般的に大量生産すればするほど、品質が安定すると言われている。そんな中で、パガーニのような年間数十台しか生産しないメーカーにとって、いくら販売価格が高く設定しても、建て付けの良い内外装や、どんな環境でも調子の良い走りを見せる個体に仕上げるということはそう簡単なことではない。

幸いなことに、ランボルギーニ時代から、モデナを知り尽くしたオラチオは、周辺にある高い技術をもったサプライヤーについて熟知している。彼らとの親密なコラボレーション体制が確立されていることがパガーニの強みだ。だから、他メーカーからの流用パーツなしに、ほぼすべてのパーツを1品ずつ金属削り出しなどによって作ることができる。

削り出しパーツ

さらにボディなどに使われるカーボンファイバーなどの製造技術は、パガーニの最も得意とするところだから、熟練したスタッフの匠により世界最高峰のクオリティが達成される。目の肥えた顧客もパガーニのこだわりに満足するのだ。

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