2つ目の理由は、スーパーカーにおける世界最大のマーケットである北米においてホモロゲーション(認証)を獲得できたことにある。北米は世界でいちばん、衝突安全基準や排気ガス規制が激しい国であり、少量生産車であれども例外はない。年間数十台しか作らない自動車メーカーが、1台1億円近くもするクルマを何台もクラッシュテストのために壊さなければならないのだ。
「しかし、パガーニは少量生産メーカーが輸出することの最も難しい北米市場に挑戦しました。簡単なことではありませんでしたが、このホモロゲーションを獲得するということは、世界中の大量生産車と同様の安全性を持つというお墨付きをもらったということにもなります。私たちは世界中のパガーニ・オーナーに安心して楽しんでもらえるよう、その安全性を証明したのです」とオラチオは語る。北米のセレブリティたちが日常の足としてパガーニを楽しむ風景は、世界に向けてブランドの大きなアピールとなった。
ブランドとしてのイメージ作り
最後の理由はブランディングに関して、徹底的にこだわったということだ。「私は経営者であるとともに、エンジニアであり、デザイナーでありメカニックでもある。そしてセールスマンでもある」という彼のコメントはモノ作りにおいて、とても重要な意味を持つ。彼は理想のクルマを作ることだけでなく、マーケティングにおいてブランディングがいかに重要であるか、ということをよく理解していた。
このカテゴリーにおいてはフェラーリやランボルギーニ、ブガッティ、マクラーレンなど、スポーツカーやモータースポーツのフィールドにおいて長きにわたって培ったヒストリーをベースとして成立している強豪がひしめいている。そこに新興メーカーが立ち向かうのはそう簡単なことではない。そこでオラチオは前述の伝説のドライバーたるファンジオのイメージをブランディングに活用した。
実際、メルセデス・ベンツとの深いつながりを持つファンジオの助力によりパガーニは創立当初より特別チューンのAMGエンジンの供給を受けることができ、それを大きくアピールした。さらに、ファンジオをパガーニのアドバイザーに迎え入れ、彼に捧げた“ゾンダF(=ファンジオ)”というスペシャル・モデルも設定したのだ。
パガーニのブランドとしてのイメージ作りは細かい所まで、とことんこだわっている。新工場のアッセンブリー(組み立て)ラインは古いモデナの町並みのような、およそ自動車メーカーのそれとは思えないエレガントな雰囲気を醸し出している。北米で行われるモントレー・カーウィークにおいても、同様なイメージのパガーニ顧客のためのスタンドが、広大なゴルフ場のグリーンに展開され、当地のオーナーたちが招待される仕掛けができている。
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