「寂れた昭和の温泉地」熱海が蘇った根本理由 「地元生まれの若者」が街を立て直した

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観光客の求めるものが、かつてのような団体客による宴会歓待型から、今では個人や家族による体験・交流型に変化してきました。温泉観光地の復活は、格安で人を呼ぶのではなく、街の魅力を高めることのほうが本筋ということだと思うのです。

観光客が押し寄せたことで低下する満足度

現在、国内や海外では、増えすぎる観光客により観光客の規制の話もよく話題に上るようになりました。国内では、有名観光地が外国人観光客の急増により、日本人観光客に敬遠されてしまったり、あるいは、不動産価値が急上昇し元々の住民が生活できなくなったりということも起きています。観光客の急増により、観光地にゴミばかりが増えたということもあるようです。

そうした中、顧客を顧客として対応することができずに、工場の流れ作業のような接客となってしまうケースが出てきているようです。

お店も繁盛し有名になったことで、一人ひとりのお客さんを大事にするようなやり方から、新たに来るお客さんをたださばいていくという接客になってしまったことにより、既存の顧客やリピーターが離れていってしまう。そんなことが個々のお店や、あるいは観光地全体で起こってしまっているようです。

かつての熱海もそんな状況だったのです。

地元の人たちは、熱海に観光客を呼ばなければならないということに必死でしたが、問題は集客にあるのではなく、一度訪れた人が二度と訪れないこと。つまり顧客がリピートしないことにあったのです。

熱海は観光客の方々の満足度も著しく低く、地元の人たちの満足度も低い、そんな街でした。地元の人は観光客に「どこかいいところないですか?」と聞かれても「何もない」と答えてしまうのが当たり前のようになってしまっていました。

観光客が来ないからといって花火大会のイベントを打ち続けていても、そのときだけは来ても、それ以外は来てくれない。あまりにも多い花火大会に、地元の人たちからは「迷惑」と感じる人々も多くいました。

地元の人や観光客の満足度が低い状態で、集客イベントだけを打ち続けても、観光客数の減少という現実を変えることはできませんでした。

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