「寂れた昭和の温泉地」熱海が蘇った根本理由 「地元生まれの若者」が街を立て直した

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だからこそ、私たちは、新たな観光客を増やすことではなく、まず観光客の満足度を高めることをすべきだと思いました。そしてそのためには、まず地元の人の満足度を高め、地元の人を地元のファンにしていくことこそが重要だと考えました。

そして、その次に、街の魅力的なコンテンツづくりこそが重要だと考えました。いまあるものだけを発信しても、すでにそれが魅力を失っているか、あと数年しか賞味期限がないかもしれません。だからこそ、お客さんにとって魅力を感じてもらうコンテンツを新たに生み出していかなくてはいけないと考えたのです。

コンテンツはそのままで、街の売り方をどうしようと考えていましたが、問題は売り方ではなく、売るものにあったのだと思います。売り方ではなく売るものを変えることが必要でした。

そのためには、地域にある資源を再編集したり、あるいは、新しいプレイヤーやコンテンツを生み出していくことが必要だったのです。

それを私たちは、「オンたま」という体験交流ツアーを開催したり、リノベーションまちづくりによってシャッター街となっていた中心市街地を再生していくことなどを通してやってきました。

民間からのまちづくりこそが街の再生には不可欠

冒頭で紹介したように、2017年に観光庁が発行した観光白書で、シティプロモーションの効果が出たことについてふれられています。実はこの観光白書には、続けてこのような記載もあります。

「やる気のある民間プレーヤーにより、個人客を意識した宿泊施設のリニューアルやコンテンツづくり」が熱海で起こったことも熱海再生の理由であると。

「民間ベースでは、やる気のある宿泊事業者により旅行スタイルのニーズに合わせた施設のリニューアルや、Uターン者が立ち上げたNPO法人による魅力的なコンテンツづくりが進められている。このように、従来の観光関連事業者、Uターン者が中心となって新たなプレーヤーを巻き込み、行政の観光地域づくりの基盤をつくる取組と連携しながら活躍することで、熱海が生まれ変わりつつある」

民間のさまざまなプレーヤーの取り組みこそがこの熱海復活の要因であり、私たちもまちづくりを担う立場として、そうしたプレーヤーと連携しながら、熱海の再生に取り組んできました。

「行政がなんとかしてくれる」と思うのではなく、「自分たちこそが熱海の街の復活を担うのだ」という人が1人でも多く現れることが街の復活につながるのではないかと思います。

そのような街のプレーヤーがどのように生まれてきたのか、どのように生み出してきたのかを、熱海のまちづくりの現場の視点から、今後さらにお伝えできればと思います。

市来 広一郎 machimori代表取締役

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いちき こういちろう / Koichiro Ichiki

NPO法人atamista代表理事。一般社団法人熱海市観光協会理事。一般社団法人ジャパン・オンパク理事。一般社団法人日本まちやど協会理事。

1979年静岡県熱海市生まれ。東京都立大学(現・首都大学東京)大学院理学研究科(物理学)修了後、IBMビジネスコンサルティングサービス(現日本IBM)に勤務。2007年熱海にUターンし、ゼロから地域づくりに取り組み始める。遊休農地再生のための活動「チーム里庭」、地域資源を活用した体験交流プログラムを集めた「熱海温泉玉手箱(オンたま)」を熱海市観光協会、熱海市と協働で開始、プロデュース。2011年民間まちづくり会社「machimori」を設立、2012年カフェ「CAFE RoCA」、2015年ゲストハウス「guest house MARUYA」をオープンし運営。2013年より静岡県、熱海市などと協働でリノベーションスクール「@熱海」も開催している。2016年からは熱海市と協働で「ATAMI2030会議」や、創業支援プログラム「99℃」なども企画運営している。

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