札幌を旅したい人に教えたい最新カフェ事情 モーニングのスパゲティからシメパフェまで

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「オレンジパフェとドリンク」セット(筆者撮影)

同行者それぞれ、好みのメニューを頼んだが、筆者は“じゃらんとコラボ”という「オレンジパフェ」(期間限定セット)を注文した。予想以上の大きさでオレンジ果実もたっぷり、手を抜かない豪華さだ。価格はドリンクとセットで1850円(税込み)。同行者の頼んだレギュラーメニューは1620円(同)。大きさと中身を考えれば納得価格といえよう。

「パフェのソフトクリームにもこだわっています。道内の牧場産の牛乳を使用したソフトは、素材や鮮度のよさが自慢で、飽きのこない味です」(店主の若月麻美氏)

この店以外にも、札幌はパフェを出すカフェも目立つ。東京都内でも「シメパフェ」を提供する店があるが、まだ札幌のように「線」ではなく「点」の位置づけだ。牛乳やソフトクリームに定評がある北海道ゆえ、シメパフェはさらに拡大するかもしれない。

生き残りの条件は「人気商品」と「客単価」

お気に入りの店で過ごすのは、カフェ好きだけでなく旅行者にとっても楽しいが、全国的に店の数は減っている。最盛期の1981年に15万4630店あった国内喫茶店の数は、最新の調査データ(2014年)では6万9983店と半分以下になった。札幌市内でも事情は同じで、和田氏が著書に取り上げた店でも、その後に閉店した店もある。

経営の視点で生き残りの条件を記すと、前述した人気商品を備える店、単価×客数の多い店は経営が安定する。居酒屋やレストランに比べて客単価の低いカフェは、たとえばコーヒー豆が売れると単価も上がる。単純計算だが400円のコーヒーを飲んだ客が、味が気に入って200グラム1200円のコーヒー豆を買えば、客単価は1600円になるからだ。実店舗で人気が出て、ネット通販でもコーヒー豆が売れる森彦は、その代表例だ。

また、夜の売り上げアップで、アルコールを提供する手法もある。ただし来店客から、おつまみメニューを求められることも多く、過去に取材した店では、その対応に苦労して夜の営業を取りやめた。メニューを絞った「パフェセット」はいいアイデアだと思う。

個別の事情があり、一概にはいえないが、「FLRコスト」(フードコスト=原材料費、レイバーコスト=人件費、レンタルコスト=地代家賃)を支出しながら利益を確保しないと、中長期的には行き詰まる。2年前に札幌に進出した「コメダ珈琲店」は全時間帯の集客、メニューを絞って展開、少人数での運営という手法で利益を確保させてきた。

来店客を楽しませつつ、お客からは見えない部分の営業努力で、札幌らしい「いい店がいつまでも続く」ことを期待したい。

高井 尚之 経済ジャーナリスト、経営コンサルタント

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たかい なおゆき / Naoyuki Takai

学生時代から在京スポーツ紙に連載を始める。卒業後、日本実業出版社の編集者、花王情報作成部・企画ライターを経て2004年から現職。「現象の裏にある本質を描く」をモットーに、「企業経営」「ビジネス現場とヒト」をテーマにした企画・執筆・講演多数。近著に『なぜ、人はスガキヤに行くとホッとするのか?』(プレジデント社)がある。

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