猛暑の被災地で必要な「感染症対策」とは? 発災直後から1週間は特に破傷風に要注意

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被災地では、高温環境の中、後片付けなどの作業に追われる人も多いだろう。また、開設されたばかりの避難所では、十分な数のクーラーや扇風機が設置されていないケースも多いようだ。

その場合、風通しのよい場所で過ごしたり、うちわであおいだりするだけでも熱中症対策にはなる。また、喉の渇きを感じていなくても、こまめな水分補給を心掛けることが大切だ。

今回の豪雨による避難者数は7000人以上、避難所は300以上。現時点で、避難所生活がいつまで続くのか、メドが立っていない被災者も多いはずだ。こういった環境では、疲労や食事などによる体調不良に加えてストレス対策も大切になる。

ワクチンなど平時からの備えも大事

災害後の環境では、誰もが体力を消耗し、睡眠や栄養不足に陥りがちだ。精神的ストレスが重なることで、自然免疫も低下しがちである。特に子どもや高齢者は、健康な成人と比べて対応力や抵抗力が低いので注意が必要になる。

周りの大人は小さな変化も見逃さないように気をつけるほか、特に感染症対策という観点からは、発熱、咳、下痢、嘔吐などの症状があった場合は、早めに担当者に相談するべきだ。避難所によっては、日中しか医療関係者がいない場合もあるため、その際には市区町村の担当者に相談するなどして、早めの対策を心掛けたほうがいい。

感染症対策では、早期診断、早期治療が重要だ。特に避難所で生活をする被災者の方は、周りの人たちを守るためにも、自分自身の健康に気を配ることが大切になってくる。

今回のような災害時の備えの1つとして重要なのが、ワクチン接種。たとえば、肺炎球菌ワクチンは、現在、65歳以上の方が定期接種の対象となっているが、災害時にも接種が推奨されている。また、冬であれば、インフルエンザワクチンの接種も集団感染の規模に大きく影響する。

より多くの人がワクチンを接種しておくことによって、感染症の広がりを抑えることができる。今回、被災しなかった人たちも、これを機にワクチン接種の見直しをしておいたほうがいいだろう。

金森 サヤ子 大阪大学 特任講師

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かなもり さやこ / Sayako Kanamori

2017年4月より、大阪大学 未来戦略機構第一部門 超域イノベーション博士課程プログラム 特任講師。2009年に外務省 国際協力局 多国間協力課に入省、地球規模課題総括課を経て、国際保健政策室 事務官。国際保健外交政策の立案や戦略策定に従事。その後、一般社団法人ジェイ・アイ・ジー・エイチ(JIGH)調査事業本部長としてポリオ根絶活動をリードしたほか、医療の海外展開に従事。2002年に筑波大学第二学群生物学類卒業後、ロンドン大学公衆衛生学・熱帯医学大学院にて医学寄生虫学修士号取得。ビジネスコンサルタントを経て、2009年に東京大学医学系研究科国際地域保健学教室にて保健学博士号を取得。専門はグローバルヘルス、保健政策学、保健外交、ヘルス・プロモーションなど。

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