石破茂氏のとがった発言にみる挑戦者の矜持 自民総裁選で「噛ませ犬」の汚名を晴らせるか

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石破氏のいう「真実」は、提起する自らの政策にも見え隠れする。9日に都内で講演した石破氏はまず、「日本はこの先歴史書に何ページも書かれる大変な時代に直面している。急激な人口減はペスト(黒死病)で世界の人口が激減した15世紀以来の事態だ」と指摘。その上で「東京は全都道府県で婚姻率は最高だが、出生率は最低だ。その東京に人口が集まり、出生率の高い田舎の人口がどんどん減っている。日本が持つわけがない」と人口減への危機感をあらわにした。

さらに、「東京直下型大地震と富士山大爆発は必ず来る、スイスの保険会社は『東京は世界一危険な大都市』と指定している」と東京一極集中の弊害を訴え、安倍政権の地方創生への取り組みはまだ不十分だと批判した。

一方、経済政策では「アベノミクスはけっして否定しない。株価も上がり、大企業は史上最高益、有効求人倍率もすべての都道府県で1倍以上だ」と評価しながらも、「今問われているのは、それがサステナブル(持続可能)であるかどうかだ」としてアベノミクスに代わる新たな経済政策の必要性を強調。併せて「いったい日本はどうなるのか、GDP(国内総生産)を増やさないと、現在の社会保障制度は早晩崩壊する。どうやって国民皆保険を維持するのか、すべては政治が決めなければならない」と今後の政策決定での責任の重さを力説した。

西日本豪雨の教訓から「防災省」創設を提起

さらに、平成最悪の被害となった西日本豪雨についても「災害に強い地方づくり、必要なインフラの拡充こそが、今回の豪雨災害の教訓だ」として、政府が大規模災害に総合的に取り組むための防災省創設を提起した。

その一方で憲法改正については「憲法の自民草案はまだ生きている。谷垣禎一総裁のもとでまとめたもので私も起草者だった。でも、(自民党内でも)ちゃんと読んだ人はいるのか」と3月の党大会で確認した首相主導による改憲案の正当性にも改めて疑問を呈した。

さらに、北朝鮮問題についても「米朝首脳会談では、なんで急に『ウインウインの関係』になったのか。米国(トランプ大統領)は本土に届くICBM(大陸間弾道弾)が阻止できればいいと考えているのでは。その場合、日本はどうするのか。日米同盟というが、フランスのドゴール元大統領が言ったように『同盟は決して運命を共にすることではない』というのが本当のところだ」として"米国頼み"が際立つ安倍外交にも強い懸念を示した。

「政治が目指すべきは、国民が『長生きしてよかった』という国造りだ」と主張する石破氏は、「自民党は国民政党というのだから、定められた党綱領の範囲内で侃々諤々(かんかんがくがく)の意見を戦わすのが我々の務めだ。ものすごい時代の転換点を迎えているのだから、自民党内での政策論争が絶対に必要だ」と、総裁選では首相らに長期的視野での本格的政策論争を挑むことを強調する。

次ページ「議員と党員の判断が離れたらどうする」と石破氏
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