国策でグローバル人材を育成するという矛盾

古典を学ぶことが「エリートの反逆」を防ぐ

グローバル人材育成が進められているが、大学改革につながっているのだろうか(撮影:梅谷秀司)
2013年、内閣府・教育再生実行会議は「日本が再び世界の中で競争力を高め、輝きを取り戻す」ためには大学の再生が不可欠であるとの提言をまとめた。この提言を受けて、10年以内に日本で10校が世界ランキング1000位以内に入ることを目標とした「スーパーグローバル大学創成支援」事業が始まった。
しかし、はたしてこれらの方策が本当の意味で「大学改革」につながっているといえるのか。中野剛志(評論家)、佐藤健志(評論家)、施光恒(九州大学大学院准教授)の気鋭の論客3人と『反「大学改革」論』編者の一人・藤本夕衣(清泉女子大学特任講師)が、この間の「改革」の実態をふまえて語り合った。

マルクス主義から新自由主義へ

藤本:私は大学院に在籍していたころ、当時進められていた大学改革に違和感を覚え、以来大学論を研究テーマとしてきました。特に、人文学や基礎研究など、短期的に成果を出せないものが軽視されていることに問題意識をもってきました。

80年代末から現在まで続いている大学改革は政府と官庁の主導によるもので、その特徴は新自由主義的な競争原理の導入とグローバル化です。たとえば運営交付金を毎年1%ずつ減らして競争的資金の割合を増やしたり、特任教員という任期付きのポジションを教授から助手に至るまで大量につくりました。

その狙いは閉鎖的な学問の環境を打破し、教員を競争的環境に置いて研究の生産性を高めることでした。しかしそれに対し現場では、「こんなことでは研究基盤が弱体化してしまう」という批判の声が強くあります。安定したポジションがなくなっただけでなく、任期のないポジションにいる教員も、科研費などの資金の申請や、カリキュラム改革、社会貢献といった課題が次々と課せられ、雑務に追われて疲弊している。統計を見ても、改革が進むにつれて論文数はむしろ減っています。

にもかかわらず現状についての官庁側の見解は、「生産性が低いのは閉鎖的な環境で競争が足りていないことが原因。よりグローバル化を進め、競争せよ」というものです。

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