「教育困難大学」の教員が悩む単位認定の現実 中退率の増加を防ぐために求められること

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単位を認めるべきかどうか、現実との間で教員は悩む(写真:しげぱぱ / PIXTA)

まじめに授業に取り組んでいるように見えるのに、試験や課題レポートでは学んだ成果や成長が一向に見受けられない。このような学生に単位を認めるべきかどうか、大学教員は非常に迷う。

大学が真の意味で高等教育機関であった時代ならば、そのような学生は、不認定で問題ないだろう。現代であっても、学力上位層の学生が集まる大学でも同様だ。しかし、大学のユニバーサル化が進んでいる昨今、学力が高くない学生、多様な学生が集まる大学では、そうはいかない。単位を認めないことが学生の就学意欲を低下させ、中退の増加につながりかねないからだ。

大学中退率の数値の公表

大学中退率については、近年文部科学省も注目している。2014年9月に報道発表された「学生の中途退学や休学等の状況について」によれば、2012年度の1年間の中退者の総数は7万9311人で、学生全体数の2.65%であった。この調査では中退の理由は経済的理由が20.4%で第1位、次いで転学が15.4%、学業不振が14.5%と続いている。

以前は明らかにされなかった個々の大学の中退率も、読売新聞が2008年から毎年発行する『大学の実力』シリーズなどを通して相当数の大学が公表するようになっている。それらのデータを利用した研究により、学業途中での退学率は、入学する大学の受験偏差値に強く規定されること、一般入試での合格者の退学率が低いこと等も指摘されている(清水一「大学の偏差値と退学率・就職率に関する予備的分析:社会科学系学部のケース」『大阪経大論集・第64巻第1号』2013年5月)。

このように大学の中退率は学生が生まれ育った家庭の経済力、大学入試システムや進学時の学力等、さまざまな要因が関係していることがわかっている。つまり、中退率は大学教育の質を示すものと、単純に考えることはできないのだ。

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