「教育困難大学」の教員が悩む単位認定の現実 中退率の増加を防ぐために求められること

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政府は大学の情報公開項目として、中退率や留年率を加える方針であることが、2018年3月26日、読売新聞により報道された。受験生がその大学の教育の質を推測し、大学選びの指針とすること、さらに、各大学での教育改革を一層推進させるきっかけとすることが主な狙いということだ。だが、上記のような状況を考慮せず、一律に義務づけることはむしろ大学教育の質の低下につながるおそれもあるのではないだろうか。

数値の公表が義務づけられると、学校の運営にかかわる経営陣・管理職は中退率を上げたくないと考えるだろう。大学より早く少子化の影響を受けた高校では、なるべく生徒を中退させないようにする雰囲気が、10年程前から強くなっている。一般的には、中退率が高い学校=荒れた生徒が多い学校ととらえられがちであり、さらに生徒募集が難しくなることを恐れたのだ。同様のことが大学でも起こることが危惧される。

現在でも、単位認定基準が有名無実化している大学も少なくないはずだ。それ以前に、学生の学力に失望し、いくら教えても効果は上がらないと思ってはいるが、不認定を出すと後々面倒になると考え、どのような学力・態度でも簡単に単位を認定する大学教員も存在する。しかし、実は、そのような学生が多い大学にとってこそ、単位認定をどうするかは大学の存続を懸けた課題なのである。

方針が定まっておらず悩む教員たち

学生の学力や学習意欲が低い現状に合わせて、基準を緩くして単位を認定する方向性もある。中退率は当然高くならないが、学生の力は向上しない。一見、学生に優しい大学に見えるが、実は自校の経営のことしか考えていない。しかし、それはそれでとにかく「大卒」の学歴だけは欲しい、と考える高卒生からの需要はあるだろう。

一方、学修の度合いを重視する立場を取れば、単位の不認定は多くなる。その場合には、中退増加を阻止するために、学生が知識や能力等を手に入れるまで徹底して付き合うことが大学教職員に求められるだろう。仕事量が多くなり大変ではあるが、この姿勢が功を奏すれば、学生と大学自体、そして社会にとって有意義であることは間違いない。

どちらの方針を取るか、大学の姿勢が確固たるものとして決まっていれば教員は単位認定を迷わずにすむ。しかし、その方針が定まっておらず、毎回単位認定の時期になると悩ませられる教員は少なくない。

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