ドイツ企業が社会貢献をする「合理的」な理由 CSRは事業拠点への「気の長い投資」になる

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では、その「お返し」とは何だろうか。

グローバル企業のシーメンス社は、医療技術関係の開発などの拠点をエアランゲン市に置く。そして地域内の「アートと文化」を担当する部署を設置している。どのような支援をしたかといえば、市内の文化および学術関係のNPO、それから文化関係のフェスティバルに対する支援である。シーメンスの支援先のひとつ、「トルコ・ドイツ映画祭」はドイツ社会の重要な課題の解決に取り組む側面を持つ。近年のドイツでは外国にルーツを持つ市民が増え、社会的統合や多様性が重要なテーマになっている。拠点を置く土地でこうした社会的テーマの活動を支援することで、地域社会における多様性の受容や相互理解の促進につながる。グローバルに展開する大企業だが、拠点のある地方都市でも社会に対する責任を果たそうというわけだ。

同市内の銀行フォルクス・ライファイゼンバンクも地域内のスポーツ、子ども、福祉、芸術、青少年のボランティアなどに支援を行うほか、学校で行われる文化プロジェクトなどにも助成を行っている。その額は3万円程度から100万円程度までと弾力的だ。支援の理由として、同銀行は社会的公正の実現を掲げる。個人主義が強すぎると社会が冷たいものになってくるが、それらを補正していくようなプロジェクトをサポートしていくというのが方針だ。

拠点でスポーツ分野の活動を行う、ショルテン塗装社社長、ペーター・ショルテン氏(筆者撮影)

社員数70名ほどのショルテン塗装社もさまざまなスポンサリングを行っているが、とりわけ同市内のスポーツ分野が多い。経営者のペーター・ショルテンさんによると、主に3つの理由があるという。まずは同氏自身、スポーツへの個人的な関心が大きいことだ。実際、市内のスポーツ環境を向上させ、スポーツ組織をまとめる団体でショルテンさん自身が活動を行っている。それから、スポーツには余暇や健康、コミュニケーションなど多くの社会的意義があるが、こうしたことにかかわることが、企業の社会的責任であると考えている。そしてイメージアップや存在感の向上も狙う。地元に顧客が多い塗装業ゆえ、地域での知名度や信頼性を高めることは、経営的にも重要というわけだ。

安定性とダイナミズムのある社会

さて諸々の拠点地域への支援はどんな効果があるのだろうか。これを考察する手がかりとして、企業にとって都合のよい事業拠点とは何かを考えてみよう。

企業が新たに事業拠点を構える場合、どのように場所を選ぶのだろうか。おそらく自然災害の多いところや、治安の悪いところ、政治的に不安定な地域は避けるだろう。また物流や交通の利便性、市場との接続性、エネルギーや通信などのインフラが整備されているかどうかも重要だ。さらに、拠点地域の雰囲気やイメージも大切だ。「従業員」になる地域の人の平均的な資質も気になるところだ。つまり、交通などのハード面とともに、「社会の質」とでもいえるソフト面も、拠点条件として考慮する発想をしばしば見いだすことができる。

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