ホンダ「ジェイド」大改良に隠れた苦渋の決断 負の印象を抱えたまま進化させられなかった

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今回の試乗コースは東京・青山のホンダ本社から御殿場まで一般道~高速道路~ワインディングを通るルートが設定されていたが、高速道路では直進性や静粛性の高さ、ワインディングではスポーティハッチを彷彿とさせる走りが印象的だった。

ただ、いくらスポーティと言っても、いくら走りがいいと言っても「RS=ロードセーリング」というキャラクターなので、目を三角にして走らせるホットなキャラクターとは違い、7~8割のペースで流して走らせると気持ちいいクールなキャラクターである。

新たな顧客を切り開く最善策

このように筆者はハードの進化に関してはおおむね納得できるのだが、やはりもともとミニバンだったジェイドが、ステーションワゴンへとコンセプトを変えた点は引っかかる。そもそもジェイドはあのボディサイズで3列シートを実現させつつ、走りは下手な乗用車顔負けのスポーティなハンドリングを実現していたことに意味があったと思っているからだ。ステーションワゴンだったらほかにも選択肢がある。

5人乗りのステーションワゴンだが、ミニバンルックなスタイルだ(編集部撮影)

ちなみに筆者が開発責任者なら全モデル2-3-2のレイアウトを採用。「3列目は普段は収納、いざというときに使う」と割り切るとともに、車両のコンセプトはハッチバックでもミニバンでもない、第3のモデルとして「次世代エアロデッキ」と名付ける。新ジャンルという意味では、かつての「アコード・エアロデッキ」や「アヴァンシア」の末裔とも言えるキャラクターにすることで、おじさんホイホイの効果も盛り込めるだろう。

そんな提案を赤坂氏にしてみたら、「山本さんの気持ちもよくわかるし、私もそうすべきだと思っています。ただ、それはジェイド開発時だったら……の話です。すでに今のコンセプトで登場してしまっている以上は、負のイメージ(=3列目が狭い)を抱えたまま進化させるよりも、コンセプト自体を大きく変えることが、新たな顧客を切り開く最善策だと思っています」という答えが返ってきた。

改良後のジェイドの販売計画台数は月間500台とかなり控えめな数字だが、正式発売後の受注は好調だと聞いている。このままその勢いが続くのであれば、筆者の意見はあくまでごく少数派にすぎなかったと自省するだろう。

山本 シンヤ 自動車研究家

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やまもと しんや / Shinya Yamamoto

自動車メーカー商品企画、チューニングメーカー開発を経て、自動車雑誌の世界に転職。2013年に独立し、「造り手」と「使い手」の両方の気持ちを“わかりやすく上手”に伝えることをモットーに「自動車研究家」を名乗って活動をしている。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

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