出光・昭シェル、経営統合が実現した舞台裏 協議開始から3年、なぜ今実現したのか

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残る課題は創業理念が統合後も守られるかどうかだ。「人を大切にする昭和シェルの精神は、出光の”人間尊重”の理念にまったく共通している。出光の5つの経営方針も、昭和シェルの5つの経営方針とほとんど一緒。両社が原点としているものはほとんど変わらない」と昭和シェルの亀岡剛社長は会見で理解を求めた。

3年間は無駄ではなかった?

経営統合へ向けた協議開始に合意してから3年が経つ。会見ではそのことに質問が集中したが、月岡会長も亀岡社長も「決して無駄ではなかった」と会見で繰り返した。

昭和シェル石油の亀岡剛社長。「両社の経営方針はほとんど変わらない」と強調した(撮影:尾形文繁)

創業家の反対で最終合意に至らず、創業家と膠着状態にあった中でも「統合に向けた協議は粛々と進めてきており」(月岡会長)、特にブライターエナジーアライアンス(BEA)という名の提携関係の下での協業が奏功。「JXTGホールディングス(による1強体制)が立ち上がり、一方で需要が減退している中で、昭和シェルとの統合が有力な戦略の1つだと創業家に説明してきた。BEAで統合の将来像をお示したのが、賛同いただけた理由の1つだと考えている」(月岡会長)。

統合によるシナジー効果は5年で500億円。これは協議を開始した2015年の試算だが、それは今も変わらないのだという。「出光が3つ、昭和シェルがグループで4つ有する製油所は、どれも競争力のある製油所であるほか、アジア全体での競争を展望すれば閉鎖する必要はない」と月岡会長や亀岡社長は強調した。

3年間は本当に無駄ではなかったのか。創業理念は守られるのか。こうした疑問に事実を伴って答えられるのはまだ先の話である。

山田 雄一郎 東洋経済 記者

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やまだ ゆういちろう / Yuichiro Yamada

1994年慶応大学大学院商学研究科(計量経済学分野)修了、同年入社。1996年から記者。自動車部品・トラック、証券、消費者金融・リース、オフィス家具・建材、地銀、電子制御・電線、パチンコ・パチスロ、重電・総合電機、陸運・海運、石油元売り、化学繊維、通信、SI、造船・重工を担当。『月刊金融ビジネス』『会社四季報』『週刊東洋経済』の各編集部を経験。業界担当とは別にインサイダー事件、日本将棋連盟の不祥事、引越社の不当労働行為、医学部受験不正、検察庁、ゴーンショックを取材・執筆。『週刊東洋経済』編集部では「郵政民営化」「徹底解明ライブドア」「徹底解剖村上ファンド」「シェールガス革命」「サプリメント」「鬱」「認知症」「MBO」「ローランド」「減損の謎、IFRSの不可思議」「日本郵政株上場」「東芝危機」「村上、再び。」「村上強制調査」「ニケシュ電撃辞任」「保険に騙されるな」「保険の罠」の特集を企画・執筆。『トリックスター 村上ファンド4444億円の闇』は同期である山田雄大記者との共著。

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