スズキ「ジムニー」刷新が20年ぶりだった事情 世界のプロも御用達、「本格」4WDの実力とは

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新型ジムニーの内装は黒を基調にシンプルにし、運転に集中できる環境を整えた(撮影:尾形文繁)

当時は社内で「こんな車が売れるわけがない」と反対されたが、ふたを開けてみると大人気に。「ホープ自動車に支払ったライセンス料はわずか3カ月で元が取れた」と自伝で述べている。今回の会見には修会長は姿を現さなかったが、「48年前に生まれた原点に近い本格モデルに仕上がったのをうれしく思う」と異例のコメントを寄せるほど、ジムニーへの思い入れが強い。

ただ課題もある。ジムニーは半世紀の歴史を持ち、世界累計販売は285万台を超えるロングセラーだ。しかし、年間の世界販売は約5万台と、会社全体で300万台規模のスズキにとってはわずかだ。今回の新型車も「新型になったから伸びるというものではない」(俊宏社長)としており、台数目標は控え目だ。

スズキのDNAを守り続ける

また唯一無二の存在なだけに、開発効率や生産性という面では厳しい。多額の投資をして新開発したラダーフレームは他車種との共用化がしにくい。生産も他車種を含めた混流ラインが難しく、コスト回収には時間がかかるのは否めない。実際、スズキのある開発担当者は「フルモデルチェンジの話が浮上しては何回も消えた。採算性が問題だった」と打ち明ける。業界が100年に1度の変革期を迎え自動運転や電動化に開発費を投じる動きが多い中、俊宏社長も「こうした車は造りづらく、売りづらくなっている」と認める。

鈴木俊宏社長は、新型ジムニーの発表会でスズキの車づくりについて熱い思いを語った(撮影:尾形文繁)

それでも今回刷新に踏み切ったのは、スズキのDNAが詰まった車種だからだ。会見では「売れる車に投資を集中したほうがいいのではないか」という趣旨の質問も出たが、俊宏社長は「ジムニーがあったからこそ、この後に発売した『アルト』『エスクード』『ワゴンR』へもその独創性が受け継がれた」と話す。さらに「スズキは自動車業界ではそんなに大きくない。その中で光る車づくり作りをしないと世界で認知されない。お客様に『ワオ!』と言われる車づくりを今後もしていきたい」と力を込めた。

決して大ヒットはしなくても、地道なロングセラーであり続けてきたジムニー。先代から20年の年月を経る中で、自動車業界の環境も大きく変化している。はたして“ジムニスト”はどう反応するか。

冨岡 耕 東洋経済 記者

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とみおか こう / Ko Tomioka

重電・電機業界担当。早稲田大学理工学部卒。全国紙の新聞記者を経て東洋経済新報社入社。『会社四季報』編集部、『週刊東洋経済』編集部などにも所属し、現在は編集局報道部。直近はトヨタを中心に自動車業界を担当していた。

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