ダイハツ「ミライース」が燃費競争やめた理由 低価格と高性能の両立は、軽自動車で限界に
軽自動車の”燃費戦国時代”が終わりを迎えようとしている。
ダイハツ工業は5月9日、同社で最も廉価な軽乗用車「ミライース」を約6年ぶりにフルモデルチェンジして発売した。かつて、ライバルのスズキとの燃費競争に火をつけて話題になったモデルだ。
ただ新型車は燃費よりも、自動ブレーキなどの安全・安心面や走行性能を売りにしていく構えだ。ペダルの踏み間違えによる事故が多発する中で、高齢者ドライバーが比較的多いミライースで大きな方針転換を図った。価格は84万2400円から。月間販売目標は9000台だ。
”売り”だった燃費は先代から据え置いた
「低燃費、低価格を実現したことに加え、安全・安心を実現した。”新・みんなのエコカー”だ」。ダイハツの三井正則社長は新型ミライースに並々ならぬ自信を込めた。燃費はガソリン1リットル当たり35.2キロメートル。フルモデルチェンジ前とまったく同じ値だ。
2011年9月に発売した初代ミライースは環境志向の高まりを受け、当時ガソリン車としては最高となる1リットル30キロという驚異的な燃費を実現。ハイブリッド車(HV)や電気自動車に次ぐ「第3のエコカー」として大々的に宣伝し、軽乗用車の競争力を再認識させた。
しかも価格は79.5万円。80万円を切り、当時ヒットしていたホンダのHV「インサイト」の半額となる水準を実現。新たなジャンルを切り開いた車として高い評価を得た。ライバルのスズキもすぐに軽乗用車「アルト エコ」で対抗。その後、両社はマイナーチェンジ(一部改良)を繰り返し、軽自動車の燃費競争が過熱していった。
だがダイハツは今回、新型ミライースの燃費を据え置く決断をした。カタログ燃費が1リットル37キロというスズキの「アルト」に比べると劣る。最も安いモデルの価格は84万2000円からと、80万円のラインも超えてきた。
一方、最新の衝突回避支援システム「スマートアシストⅢ(スマアシⅢ)」を上級グレード(90.7万円~)に標準搭載した。スマアシⅢは世界最小のステレオカメラで歩行者や車線を認識し、状況に応じて警報や自動ブレーキが作動するシステムだ。現状はミライースより価格が上の「タント」(122万円~)にしか搭載されていない。
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