「文明社会と未接触の先住民」のパラドックス

彼らは本当に未接触の先住民なのか

彼らのありのままの姿を観察するということは、はたして可能なのか(写真:Alfredo Allais/iStock)

知らないことを知りたい。見たことのないものを見たい。そういう好奇心がなくなったら、人生お終いだと思っている。しかし好奇心が生み出す無邪気さは、時に歓喜と絶望の両方を生み出す。そんなことを痛感させられる一冊だ。

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かつてNHKスペシャルで放映された「最後のイゾラド 森の果て 未知の人々」を記憶されている方も多いことだろう。イゾラドとは、文明社会と未接触の先住民を言い表す総称である。アマゾン源流域、ブラジルとペルーの国境地帯に住むとされるイゾラドは、部族名や言語はもちろんのこと、今何人いるのかも分からない状態であるという。 

番組では、素っ裸で弓矢を持つイゾラドに村人たちが接触する様子が映し出され、その光景には衝撃を受けた。この時に、チョイ役のような感じで登場していたロメウ。彼こそがイゾラドを理解するための重要なキーパーソンであり、本書『ノモレ』の主人公だ。

ロメウは、ペルーの先住民・イネ族の出身であった。父の代までイゾラドであったものの彼自身は文明化された後の環境で育ち、村のリーダーとして精力的に働いている。そんな彼のもとへ、ペルー政府から応援要請が届く。部族名も言語族も分からない謎の先住民が、辺境の人々を襲う事態が頻発し、恐怖と不安が広がっていたのだ。

このロメウの視線を借りることによって、イゾラドと遭遇することの喜び、そしてこれから起こりうる悲劇的な運命を予感させていく。

初めてなのに懐かしい

出会いは突然であった。ある日、川の向こう岸から突然やってきたイゾラドが「傷ついた仲間がいる」とロメウに助けを求めたのである。ジャガーにかまれた少女の足を、大急ぎで駆けつけた医師が治療をし、やがてバナナをあげることから交流が始まった。

彼らとのやり取りを通じて、不思議な感情で胸がいっぱいになるロメウ。初めてなのに懐かしい、そう感じた要因は彼らの言葉にあった。ロメウの祖父母が話していたイネ族の言葉とイゾラドの言葉が、単語も抑揚も喋り口も、とてもよく似ていたのである。

さらにロメウの脳裏を、イネ族の間に古くから語り継がれてきた伝承がよぎる。それはロメウの曾祖父の時代のこんな物語であった。

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