マダムが夢中!「介護福祉のアイドル」の素顔

役者の道を離れて介護予防の道へ

ここ数年、久野さんの存在は行政機関にも知れ渡り、アドバイザーを務めるようになったことで、介護予防の講師に対する予算をしっかりと確保する市町村が出てきたという。振り返ってみれば、先行者もいない、後ろに続く者もいないブルーオーシャンで、久野さんと仲間たちは「普通のサラリーマンよりもガッツリ稼いでいる」までになった。同時に、マダムから熱烈な支持を受ける、「介護予防トレーナーの貴公子」になっていた。

「バレンタインのプレゼントは、最初は10個ぐらいだったんですけど、今年の2月は500個ぐらいでした。クラスのときにもらうこともありますけど、会社に届くのが多いですね。『直接渡すのは恥ずかしいから送ります』という手紙が入っていたりして。みなさん、僕が独り暮らしと知っているので、チョコだけじゃなくて、生活に役立つものをくれることも多いです。野菜、漬物、キムチとか、ご飯に合うおかずが多いですね(笑)」

クラスの参加者から熱い視線を受けることに戸惑いはない。パーソナルトレーナー時代から、身体の健康だけではなく、心の健康のサポートも大切な仕事だと思っているからだ。

「もちろん、運動や痛いところのお手入れの方法を教えるのも大事なんですけど、それは一つの手段であって、高齢者の生活に光を当てるのがいちばんの仕事だというのが、僕らの共通認識です。クラスを受けて『今日も楽しかったね』と帰ってもらうことが目標なんです。たとえばよく話しかけてくれるおばあちゃんは、独り暮らしでいつも『寂しい』と言っていて。そのおばあちゃんがここに来たときは、楽しくて幸せだと言ってくれるんですよ。僕は、ありがとうの一つの形がバレンタインのプレゼントだと思っているんで、数が増えれば増えるほど、この仕事しててよかったなと思いますね」

受け取った「ありがとう」の数

役者を辞め、「人にありがとうと言ってもらえる仕事がしたい」とトレーナーの仕事に就いてから、10年。特に東日本大震災以降、地域に足を向けるようになってから、受け取った「ありがとう」の数は計り知れない。

バレンタインデーにはチョコのほかにも、キムチなど、ご飯のおかずを山ほどもらう(撮影:今祥雄)

「もう4年目なんですけど、ひでちゃん、ひでちゃんって、すごい人気です。いつも本当ににぎやかなんですよ。新しい人も1回誘うと、次もまた参加してくれますね」

「私は3年ぐらい参加しています。先生がいい方でしょ。いろいろ相談なんかすると、ちゃんと答えてくれるし。私はここにくるのが楽しくて、普段面白くないことがあっても忘れちゃいます」

クラスが終わった後、2人の高齢者に話を聞いてみると、絶賛のコメントをくれた。その言葉からは、久野さんへの気遣いではなく、信頼と愛を感じた。おカネをもらい、そのうえでこれほど感謝される仕事は、なかなないだろう。

最近、新しくクラスを開いてほしいという依頼が引きも切らないそうだが、久野さんが目指すは全国展開。しばらくの間、バレンタインのプレゼントは増え続けそうだ。 

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