中舘騎手は当時のツインターボの印象をこう語る。
「デビュー前からこの馬を見ていたがゲートの悪い馬だなあと思っていた。癖も悪いので厩舎のスタッフでは扱えず、先輩の石塚さん(石塚信広騎手)が付きっ切りで練習していた。スタッフから返し馬(馬場に出てからウォームアップで軽く走ること)で止まらないから気を付けてとも言われた。走る馬だと思っていたけど正直言ってあまり乗りたいとは思わなかった」と苦笑いする。
「この日も馬場入場のときに地下馬道で暴れて大変だった。何度も落とされそうになった。大外枠で最後の入場だったのは助かったけど。それでも返し馬でビュッと行ってなかなか止まらずどうしようと思った。ゲートが見えて突っ込むんじゃないかと思ったら止まってくれた」と振り返る。
ツインターボは見ているファンが思ったとおり気性が激しく鞍上泣かせの馬だった。だからこそあんな爆発的なレースができたのだろう。
馬が出るのについていくイメージ
中舘騎手はあるイメージを抱いていた。「ラジオたんぱ賞で大崎さん(大崎昭一騎手)が乗ったときは引っ張り切りで逃げて楽勝していた。あのイメージがあったので行く気に任せればいいと思っていた」という。
運命のスタートは見事に決まった。中舘騎手にスタートの極意を聞いたことがある。「決して特別な秘訣があったわけではない」と謙遜しながらも「人が出そうと焦ってしまってはダメ。馬が出るのについていくというイメージだった」。
先行馬ぞろいのメンバーでマイルの安田記念でも逃げた快速マイネルヨースらがいたが、抜群のダッシュで大外から内に寄せると1コーナーでは難なく主導権を握った。「ボクはつかまっていただけ」と笑う中舘騎手。
ツインターボはハイペースで飛ばす。1000m通過は57秒4。スローペースの競馬が多くなった近年の競馬ではほぼ見られないような超ハイペースだ。それでも中舘騎手はツインターボの気持ちを損ねないように行かせて後続を引き離した。
「速いとか考えている余裕はなかった。口が敏感な馬で外に飛んでいっちゃうような感じで。4コーナーで外に飛んでいかないようにとしか考えていなかった」。3コーナー過ぎの勝負どころでターフビジョンにツインターボの姿がアップになると場内は大きくどよめいた。
「このペースで逃げ切れるのか」
しかし、中舘騎手の手はかすかに動いただけで4コーナーでも後続は離れていた。
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