日本人女性の声は、なぜこうも「高音」なのか 地声を出さず、高音化に弾みがついている

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高い声は生物として弱く、何らかの守りが必要だという生態を表すといっていい。声帯が短いから高い声が出るわけで、個体として小さい、あるいは子どもである表れの面もある。基本的に高い声を聞いたら、強い者はそれを保護する。日本人女性は声を高め、保護してと言い続けながら生きている感じさえする。

──男性も声が高くなっているそうですね。

そう。しかも地声を出さない。体は大きくなって、本来ならもっと低くて深い声が出るはずが、びっくりするぐらいの弱々しい優しい声しか出ない男子が増えている。男女の動きは片方だけということはないから、声が高くなり続けている女性に若い男性が影響されているのだろう。

中国人のほとんどは自分の声が好き

──作り声も盛んなようです。

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作り声は自分自身を偽っているようなものだ。信用できず、人間性からも、その相手を好きになろうとは思わないのではないか。仕事のうえでも決してプラスにはならない。声で人を欺き、声で自分を欺くのだから。体は自然に本当の声を出してと言っている。小さいときから聴覚はたくさんの音を取り込んできて、あなたの声はこうだと示しているはずだ。

──「職業声」もある?

マニュアル化された声のことだ。テレホンアポインターは同じような話し方と声をしている。マニュアルがあり、訓練を受ける。でも、そういう声を聞いた途端に普通の人は電話を切りたくならないか。

初期のうちはよかったのかもしれない。訓練された声はこういう職業の者だという名刺代わりだったから。今はそれが浸透してしまい、すぐああ営業トークかとの反応になる。本当にいい商品を売りたい、仕事内容を伝えたいのであれば、その人の個性が出る本物の地声で話すべきだ。そのほうが人の心を動かせる。

──日本人の多くは自分の声が嫌いと答え、中国人はそうではないとか。

中国人には自分の声が嫌いな人はまずいない。けたたましく話す人でも好きと言い、自己肯定感がすごく高い。自意識も強いし、声の美意識も考えない。いい声、悪い声というよりも勢いよく話すことが好きで、「話した者勝ち」の国民性だ。

では、人前で話すとき、自分の声が嫌いだ、話すのが苦手だという人と、自分の声が好きだ、話せてうれしいと思う人とでは、どちらの話が相手に届くか。中国人が世界中にビジネスを広めているのも、そういう強さが関係しているのではないか。

塚田 紀史 東洋経済 記者

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つかだ のりふみ / Norifumi Tsukada

電気機器、金属製品などの業界を担当

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