また、今回の政策転換は、日銀による金融緩和政策を徹底することが、経済の総需要を刺激するだけではなく、労働力人口を通じて経済の供給側にも影響を及ぼす可能性があることを示していると言える。
金融政策は、短期的な需要変動を調整するだけではなく、供給側の底上げを促す経路が存在するということである。ジャネット・イエレン前FRB(米連邦準備制度理事会)議長などが指摘した、いわゆる高圧経済が限定的に表れている一例と言えるだろう。
今回の外国人労働者受け入れ拡大は、介護、建設など5つの限られた業種にのみ当面限定される見通しだ。こうした限定的なルール緩和であれば、日本の労働者との「職場の取り合い」となるリスクは、当面は低いとみられる。
一方で、今回の新たな枠組みによって、外国人労働者の受け入れは2025年までに50万人規模で増えるとの見通しがある。
「経済的ショック」到来なら「外国人労働者リスク」も
だが、政府が政策目標を掲げ、さらなる推進を目指すのは慎重であるべきだろう。企業のニーズを精査したうえで受け入れるだけで十分ではないか。すでに、今回の政策転換なしに、外国人労働者は2012年以降の5年間で約60万人と、それ以前と比較してもかなり増えてきた。
外国人労働者の流入ピッチがさらに増えることは、労働市場全体の需給にも無視できない影響が及びうる。また今後、低賃金の外国人労働者の活用でメリットを受ける企業が増えるとしても、その過程で、外国人労働者との競争に直面する労働者からの所得移転が起きるため、所得分配政策が必要になるかもしれない。
現状、日本の労働市場が大きく改善してきたとはいえ、賃金の伸びが依然低い状況からすれば、完全雇用には距離がある状況と言える。仮に、今後日銀による金融緩和が徹底されず、脱デフレや完全雇用の実現が遅れる中で、仮に経済的に大きなショックが訪れれば、今回の規制緩和によって増える外国人労働者を、企業が活用することが難しくなるリスクもありうるだろう。
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