農業の「外国人就労特区」法案に潜む重大問題 日本の移民政策の転換点になる可能性がある

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少子高齢化が進行する中で、日本の農業の人手不足は年々、深刻化。外国人の農業就労をどう考えるかが問われている(写真: 東北の山親父 / PIXTA)

人手不足の深刻さが年々増す日本農業を救おうと、今、外国人政策を大転換する法改正が行われようとしている。国家戦略特区制度を使い、特区内においては外国人の派遣労働による農業就労を認めようとしているのだ。対象となる外国人の就労者は、技能実習制度の修了者などを想定している。

この法案の成立は、何をもたらすか。考えられるのは、2つの大きな変化だ。1つ目は、これまで日本は、原則として「外国人の単純就労者は受け入れない」としてきたが、農業分野では実質的にそれを変えること。2つ目は技術の海外移転という技能実習制度の建前を実質的に崩すことである。実現するための国家戦略特区法改正法案は、5月30日に衆議院を通過し、現在は参議院で審議中である。

日本の農業が人手不足になっている原因は、少子高齢化の進展にある。地方における農業の人手不足について、特区を提案している長崎県を例に出すと、県内の農業従事者数はこの10年間で約35%減少している。2015年の段階で65歳以上の農業従事者が全体の約58%を占めており、高齢化が著しい。もちろん、長崎県に限った話ではなく、全国的にも似たような状況だ。

農業人口の減少は、食料自給率にも大きく影響する。農林水産省によると、日本の2015年度の食料自給率(カロリーベース)は39%。G7(先進7カ国)で断トツのワースト1位だ。G7で自給率トップのカナダは258%で2位のフランスは129%。日本に次いで低いのはイタリアだが、それでも61%である。

制度設計に熟慮が求められるワケ

このような状況を打開しようと、まずは特区内に限って、これまで認めてこなかった外国人単純就労者を受け入れよう、というのが今回の法案の根本にある。ただ、外国人政策を大きく変えることになるだけに、制度設計次第では、かえって日本の農業の衰退や治安悪化につながりかねないリスクもある。

今回、農業で受け入れようとする外国人について、法務省は「専門的、技術的分野の外国人など日本国が受入れを推進してきた方(人)ではない」と国会で答弁。農林水産省も「専門的高度人材ではない」と同じく答弁している。これまで、日本が受入れを認めてきた技術者や研究者などの「高度人材」でないことを、両省とも明確に認めている。

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