外国人単純労働者の拡大策は日本にプラスか 規制緩和で2025年までに50万人規模で増加へ

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もちろん、外国人労働者が増え、労働供給が増えることを通じて、長期的な日本経済の潜在成長率を、若干ではあるが高める可能性がある。その意味で今回の規制変更は「日本経済にポジティブな影響を及ぼす」と言える。

ただ、日本経済の将来が大きく変わるというほど、大きな出来事ではないとみている。というのも、今回の規制緩和は、あくまで経済環境の変化に応じた政策を実現しているものである。実際には、2013年の日本銀行による金融緩和政策の転換を契機に、雇用者が5年にわたり安定的に増え、そして失業率が3%を下回るまでに労働需給は改善した。外国人労働者の受け入れ拡大に踏み出したのは、金融政策という総需要安定化政策の成果がある程度表れたことから、一部の業界で労働不足が顕著になったという経緯があった。

2013年からの強力な金融緩和政策が実現しなければ、一部業界から人手不足の声が上がることもなく、今回のような外国人労働者の受け入れ拡大が実現しなかったことも、容易に想像できるのではないか。一部メディアによれば、「介護施設をオープンしても、介護士不足で運営できない」という声が官邸に上がり、それを受けて介護分野で50万人規模の人材不足になるとの試算を前提に、政策の枠組みが固まったとされている。

規制緩和の成果を得るために必要なこととは?

この政策が実現した経緯から何が言えるだろうか。規制緩和などの成果を得るためには、まず金融財政政策によって総需要を刺激・安定化させるというステップが必要になる、ということであろう。総需要を高めてデフレから抜け出さないと、経済成長率を底上げする規制緩和などの供給側の政策は政治的な抵抗もあり、成果を上げることが難しい。経済政策の必要なステップを踏むことが、規制緩和を進める前提条件になると考える。

今回の規制緩和は、上記のような妥当な経済政策運営のプロセスとして、過去5年以上にわたる金融緩和政策の成果として、一部業界で労働不足が顕著になったという経過が本質的に重要であると筆者はみている。一方、「反対勢力が守ってきた岩盤規制」が政治的に存在したという側面は、重要ではないのだろう。

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