6月半ばから日本の株式市場が調整しているのは、米国の通商政策がより強硬化したことが主因だった。中国からの2000億ドル相当の輸入品に対して関税10%引き上げが指示され、また自動車の関税引き上げの姿勢を強めたことなどが、市場心理を冷え込ませた。7月6日に、リストが公表されていた米国からの340億ドル規模の関税引き上げが実現、中国も想定どおりに報復関税引き上げを実現させている。
米国の「貿易赤字削減強硬策」は妥当なのか?
市場は「340億ドルの関税引き上げは織り込み済み」として、悪材料とは捕らえなかった。7月初旬に欧州が、米国が関税引下げを要求している自動車について、米国と交渉を始める動きがみられていた。米国の強硬な態度が和らぐとの期待からか、株価はいったん反発。その後、7月10日に対中2000億ドル規模の輸入の関税リストが発表された。13日は中国の貿易統計などを好感したものの、市場心理はなお温まってはいない。
いずれにせよ、2018年3月以降の株式市場は、貿易戦争に対する思惑で揺れ動いている。米国のナスダック市場は最高値を更新したが、この不確実性が薄れないと、他の多くの株式市場は年初の高値まで上昇することが難しいかもしれない。なお、当社(アライアンス・バーンスタイン)では、これまで実現した米国などによる関税引き上げは、個別企業に影響は及ぶが、経済全体に及ぼす影響は限定的と判断している。2018年前半まで、世界経済全体は底堅い高成長が続いているが、現状では2019年までほぼ同様の高成長が続くと想定している。
ところで、トランプ政権の関税引き上げなどの強硬な通商政策について、関税の対象範囲が自動車にまで拡大するまで強まったことは、筆者にとっては想定外であった。こうした、トランプ政権の強硬な通商政策は、ドナルド・トランプ大統領がリーダーシップをとり、また政治的にアピールしやすい安全保障や外交政策が重視され、その交渉材料として使われている側面があるとされている。
一方、トランプ大統領や経済ブレーンの発言などを踏まえると、中国などに対しての貿易赤字を減らすことが、米国経済に恩恵をもたらすという考えも影響している可能性もありえる。
しかし、ベーシックな経済学の視点では、貿易赤字によって米国のような大国が経済的な損失を被っている、というのは妥当とは言えないだろう。
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