出口治明「歴史はタテとヨコで見ると面白い」

子どもに影響を与える「本を読む姿勢」

今回、『別冊NHK100分de名著 読書の学校 西遊記』という本を出しましたが、『西遊記』についていえば、日本では定期的に脚光を浴び、特に1970年代後半に大ブームとなりました。アジア全体でみると、2010年代になって、映画などで『西遊記』を題材にした作品がいくつもヒットしています。『西遊記』を知れば、アジアの人たちといっしょに盛り上がれるのです。そんなところからも、世界的に知られた古典を読むことは、人生をゆたかにしてくれるのです。加えて楽しく読むことができて、作品の背景や歴史を知ればさらに面白く読める本だとなおいいのだと思います。

「お笑い」が発祥の“キラー・コンテンツ”

『西遊記』の起こりは、宋の時代、都の開封などで夜な夜な語られた「講談」です。この時代、経済が高度成長したことで、人びとが「夜遊び」できるようになったことに淵源があります。経済が活性化すると、暮らしに余裕ができて、娯楽が盛んになるのですね。そこで、今でいう「お笑い」が成立して、講談が人気を集めます。講談師たちは人気のお笑い芸人です。彼らの語る筋立ての“原作”のひとつとして、唐の時代の立派な僧、玄奘の旅行記が使われました。

また、少し時代が下って、大元ウルスが南宋を吸収したことで、南宋の官僚の仕事がなくなりました。稀代のリーダーである大元ウルスの皇帝クビライが、その官僚たちに反逆などよからぬことを企ませないために、プライドをくすぐりながら従事させたのが出版事業です。

一方で、この時代に製紙技術や印刷術の発展がありました。そこで大字本・小字本やあるいは挿絵の入った全相本という、庶民が読めるような書物が登場します。その出版物のコンテンツとして人気を博したのが、宋の時代から娯楽のスタンダードとして定着していた『西遊記』や『三国志演義』などでした。人は面白いもの、ワクワクするものが大好きなのですね。キャラクターに親近感や、今で言う「あるある感」を抱くのです。

『西遊記』を読むことで、時代も場所を越えた「あるある感」を持ち、「人の思うこと考えることはいつでもどこでも変わらへんのやなあ」と思えるのではないでしょうか。残り続ける古典を読めば、いつの世にも変わらぬ人の心やその営みに触れられるのです。

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