円盤に愛された28歳日本代表女子の負けん気 アルティメットは単なるフリスビーにあらず
さらに田村は、「ミドル」というポジションを担うこともあり、前線に向けて、ゴールに直結する長いパス(アルティメットではこれをシュートという)を供給したり、機を見ては自ら前線に飛び出してダイビングキャッチを決めるなど、ダイナミックさや華麗さをも兼ね備えたマルチな才能を持つプレーヤーなのだ。
得意なプレー・ポジションに特化しているスペシャリストが多い中で、田村のようにたくさんの役割をこなせる選手は、周囲を見渡しても珍しい。田村の特徴を、あえて日本サッカー界の話題になったキーワードで例えるなら、まさに「ポリバレントな選手」と言えるだろう。
そんな田村は、アルティメットという競技の魅力を以下のように語る。
「初めて見る方の場合は、細かい技術よりも、ダイビングキャッチやダイビングディフェンスなど、迫力のあるプレーを見てもらえたら、魅力がわかりやすく伝わるんじゃないかなと思います」
見た目以上にハードなスポーツ
このように、田村は「迫力あるプレー」がアルティメットの魅力の1つと言うが、一方で、フリスビーというものが、遊び道具として定着しているせいか、もしくは、接触プレーが禁止されたスポーツであるせいか、一見すると、楽しそうに見えてしまうことは否定できない。
実際、筆者もそのように思っていた。だが、しばらく注視していると、それが間違いであることがわかった。
フライングディスクをコントロールして投げる巧みな技術、パスを出す側の技術や判断、パスをもらうための周囲の動き。
それらを行うために、約100分間もの間、走り続けられる高い瞬発力と持久力。「アルティメット(究極)」という名のとおり、想像以上に多様な能力が求められる、テクニカルでハードなスポーツなのだ。
ダイナミックなプレーをみせる田村のプレーは、彼女の育った環境による影響が大きい。なにせ、田村の父は、以前、仮面ライダーなどのスタントマンを務めていた。仕事柄、ケガがつきものだった父を、病院までお見舞いに行ったことは、1度や2度ではない。
そんなアスリート気質の父の影響で、幼少期は、兄とともに、野球やダンスや空手などさまざまなスポーツを経験させてもらった。特に、大好きな兄には、絶対に負けたくないという想いでスポーツに取り組んだ。
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