円盤に愛された28歳日本代表女子の負けん気 アルティメットは単なるフリスビーにあらず

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さすが、スタントマンの父を持つ異色のアスリートだけに、田村の視点は、ほかのアスリートとは少し異なる。何しろ、彼女が今でもあこがれているのは、あのアクション俳優のジャッキー・チェンだという。

「完全に父や兄の影響ですよね。ジャッキーの映画は、数え切れないくらい見ていますが、とにかくアクションを追求してるし、その信念を曲げないところが本当に尊敬する。ケガしても、すぐに現場に戻って来るんですよ。すごいですよね?」

田村は過去に、2度ほど、選手生命にも影響を及ぼしかねない大ケガをしている。2012年には、ジャンプの着地の際に相手と接触し、右ヒザの前十字靭帯を断裂した。2016年には、地面すれすれのディスクをダイビングキャッチしにいった際に、小指を開放脱臼(骨が皮膚を突き破ってしまった状態の脱臼)をした。そんな大ケガをした時の話題になっても、「スポーツにケガはつきものですから。それに、気の持ちようで治りも早くなります」と笑顔で語る。

筆者が取材に訪れた日も、指にはテーピングを、右ひざにはサポーターを巻いてプレーしていたが、ダイビングキャッチによる得点も披露するなど、ケガをすることを恐れる様子は一切ない。そんな怖いもの知らずなプレーは、彼女があこがれるジャッキー・チェンの影響によるものなのかもしれない。

日本アルティメット界の力に

アルティメットが加盟する世界フライングディスク協会は、現在オリンピック競技種目に入ることを目指している。東京オリンピック種目の最終選考には残れなかったが、アメリカ発祥のスポーツという意味でも、2028年のロサンゼルス五輪までには、競技種目入りしたいところだろう。

オリンピック種目入りは、まだしばらく先の状況だが、田村はこの先、アスリートとして、どんな未来を描いているのだろうか。

田村 友絵(たむら ともえ)/アルティメット選手。MUD所属。1990年3月生まれ。東京都出身。身長162cm、体重50kg。ポジションはハンドラーまたはミドル(筆者撮影)

「選手としては、2020年の世界大会に出て、必ずリベンジしたい。そのうえで、2021年のワールドゲームズに選出されることが大きな目標。

そのためにも、まずは今年7月にアメリカで行われる世界クラブチーム選手権に向けて集中する。所属チームのMUDでクラブチーム日本一、世界一を取りたい。あ、それからアルティメット普及のために、自分のスクールも持てたらいいですね。欲張りですかね(笑)」

笑いながら語ってくれた田村の目には、一瞬だが、力強い意思が宿っていた。

そして、以前、自分に自信が持てず、日本代表選考を辞退してしまった弱気な彼女の姿はなかった。選手としての覚悟とアルティメットという競技への愛情。日本アルティメット界のアイコンとして、名実ともに注目を浴びる存在に成長した今の田村には、日本のアルティメット界を背負うだけの資格が十分に備わっている。

(文中敬称略)

瀬川 泰祐 ライター

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せがわ たいすけ / Taisuke Segawa

1973年生まれ。北海道出身。エンタメ業界やWeb業界での経験を活かし2016年よりフットサルを中心にスポーツ分野のライティング活動を始めている。モットーは、「スポーツで繋がる縁を大切に」。

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