仕事のできない人はだいたい数字に弱すぎる 誤差を知り、ざっくりとらえるだけでも違う

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次に理解しておきたいのが「有効数字と科学的表記法」です。

測定値や計算値などにおいて信頼できる数字のことを有効数字といい、有効数字のケタ数を有効ケタ数といいます。数値が小数点以下まで続く場合は、有効ケタ数がわかりやすいのであまり問題にならないのですが、「8000万年前の化石」のように整数で与えられた数値はその有効ケタ数がわかりづらいという欠点があります。そこで理系の世界では8000万=80,000,000(0が7個)のことをその有効ケタ数に応じて

8×10の7乗   (有効数字1ケタ)
8.0×10の7乗  (有効数字2ケタ)
8.00×10の7乗(有効数字3ケタ)

のように表します。このような表記を科学的表記法といいます。

一般に「m×10のn乗 」の形で表される科学的表記法において、mのケタ数が有効数字のケタ数を表します。

この表し方は、有効数字のケタ数がわかるだけでなく、特に大きな数字の場合には10nのnによって全体が何ケタの数であるかもわかるので、慣れると大変便利です。

また、エクセルや関数電卓で計算結果のケタ数が多いとき、あるいは財務省などが発表している統計資料などにおいて「1.23E+8」のような表記を見たことはありませんか? ここで「E+8」は「10の8乗 」という意味です。すなわち

1.23E+8=1.23×10の8乗 =123,000,000(1億2300万)

です。

有効数字の表し方や取り扱いについて、文系の方はあまりなじみがないかもしれません。実際、ビジネスや日常生活において誤差の程度を考慮したうえで有効数字のケタ数を意識するシーンはそんなに多くないでしょう。ビジネスや実生活で重要なのは、それよりも、今行われている議論の中ではどれくらいのケタ数が必要なのか、どれくらいの精度が求められているのかを判断できるようになることです。その場に応じて言わば「最適ケタ数」を瞬時に弾き出し、その数字を使って概算ができることの意味は小さくありません。

ケタさえ間違わなければ構わない

経済学者のケインズは

「私は正確に間違うよりも、むしろ漠然と正しくありたい」

と言いました。また東京大学名誉教授の畑村洋太郎先生もベストセラーとなった『数に強くなる』(岩波新書)の中で、

「倍・半分は許される。ケタ違いはいけない」

と書かれています。特に基準や知識を持ち合わせていないトピックスについて、細かい数字がわからないからと言って尻込みするくらいになら、「ケタさえ間違わなければ構わない」と腹を据えて、概要をとらえられるほうがずっといいとおっしゃっているわけです。

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