生活保護が命綱、幻聴に悩む31歳男性の苦境 コンビニバイトでは「罰金」が日常だった

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「河川敷で(同級生たち)10人くらいから『死ね』『消えろ』と言われて、川に突き落とされました。二の腕とか、背中とか、いつも(殴られてできる)青タンがありました。いじめのきっかけですか? 本当にわからないんです。でも、俺以外にターゲットになっていた子も特に理由なんてなかった。子どものいじめなんてそんなものだと思います」

どこかひとごとのような、覚めた口調で振り返る。

家から10万円を持ち出した時、周囲の大人たちもいじめについて知るところとなった。しかし、担任教諭は「そんなのお前が悪いんだろ」と言っただけ。いじめられるお前も悪いという意味なのか、脅しに屈するお前が悪いという意味なのか――。今もわからない。

学校側はコウキさんに保健室登校をさせたが、いじめを止めてはくれなかった。彼はついに不登校状態に。後に自分のことを統合失調症と診断した医師からは「発病の原因はこのときのいじめにあるのではないか」と言われたという。

「学校が唯一熱心にやってくれたことは、俺を転校させることでした」とコウキさん。

結局、別の中学に転校。その後、定時制高校に進むも、数カ月で退学した。「(学力水準が低い学校で)いつもクラスの半分以上が欠席。先生もしょっちゅう授業を自習にしちゃう。だったら、行っても意味ないなって……」。

父親が買ってくる食料品などにはたいてい値引きシールが付いており、「貧乏な家だったと思います」。一方で大学に進学しなかったのは「俺の勉強ができなかったから」という。

ミスをするたびに「損害分」が給料から天引き

高校中退後は、アルバイトとして働いた。中でもコンビニは、セブン-イレブンやローソン、ポプラなどあらゆる店舗に勤めたという。そこで横行していたのは、ミスをするたびに「損害分」が給料から天引きされたり、罰金として徴収されたりする悪しき習慣だった。

飲料やデザート類を補充中に落として缶やケースをへこませたとき、レジの金額が売り上げと合わなかったとき、万引きによる被害が生じたとき、ホットスナックなどを入れ忘れたとき――。そのたびに相当額を給料から差し引かれるのだ。その額は月3万円に上ったこともあった。

コンビニのアルバイト経験者からは、給料からの天引きや罰金徴収、商品の買い取り強制といった話はたびたび耳にする。しかし、仮にミスがあったとしても、給料からの天引きは違法である。また、損害賠償請求も、労働者側に相当の過失がなければ認められない。

「大学や専門学校が多い地域の店舗では、込み合う時間帯によく万引きをされました。でも、人手が少ないので、店内を見回る余裕なんてない。人を増やさないかぎり、被害は防げないのに、いつも俺らバイトが被害額を(折半して)負担させられました」

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