社外役員、「高報酬なのに機能不全」の大矛盾

精通できる時間はなくお友達人事で責任軽い

アメリカでは、1950年代に社外取締役が普及した。1996年には同国で「社外取締役は企業統治の改善に有益である」というデータが発表され、世界的にも社外取締役の義務化が進んだ。日本では2010年代前半にオリンパスなどの企業の不祥事が多発したことなどから、2015年に上場企業向けの「コーポレート・ガバナンス・コード(上場企業が守るべき行動規範)」に「社外取締役を2人以上置く」という規定が盛り込まれた。遵守しない企業は株主総会で説明しなければならない。

ところが、導入から3年たった今でも東芝や三菱自動車など社外取締役を置く企業の不祥事は一向になくならない。専門家の中には、「中身のない形ばかりの制度」と批判的に見る人もいる。確かにそうかもしれない。かつて筆者が取材した、ある大企業の社外取締役は「本当のところ、取締役会で話している内容をちゃんと理解しているわけではない」と吐露した。

最近は、日産自動車が元レースクイーンでレーサーの井原慶子氏を社外取締役に起用することが注目を集めた。しかし、これまで経営とあまりかかわりのない分野で活動してきた彼女の起用は、話題先行の感がある。

日本の社外取締役が機能していない理由

日本で社外取締役が機能しない理由は大きく分けて3つある。

1.資料を調べる「時間」や「能力」の欠如

私がヒアリング調査を実施した結果、取締役会で議論される資料は数日前にメールなどで渡される社外取締役が5割もいた。他社の役員を兼任している社外取締役も多く、直前に資料が配布されるとその内容を調べる時間もない。これでは資料に改ざんがあったとしても、見抜くのは難しい。

また、「どうせ2週間前に取締役会の資料を受け取っていたとしても、技術的な話題が多く理解できない」と開き直る社外取締役もいた。一方で、技術的な専門用語を理解できる社外取締役は独立性の低い利害関係者ばかり。彼らのような社外取締役は、組織ぐるみの違法的行為に目をつぶりがちな懸念もある。

2.経営陣に逆らいづらい状況

もともと社外取締役は、社長や役員によって選ばれたケースが8割近く。人材ビジネス会社などからの紹介によって選ばれたケースは2割余りでしかない。また、2017年に発表された企業統治助言会社のプロネッドの調査結果によると、社外取締役の半数が月1回の取締役会に参加するだけで1000万円以上の高い報酬を受け取っているという。以前から付き合いがあって、報酬の出どころでもある経営陣に対して、耳の痛い率直な意見を主張できるか疑問である。

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