愛甲猛の転落生活をトコトン支えた妻の献身 人気プロ野球選手の光と影をともに見てきた
かつての“甲子園のアイドル”は、プロ入り後も女性から絶大な人気があり、猛さんとのデートの待ち合わせ場所に行くと、大勢のファンに囲まれていた。
佐知子さんは、交際が明るみに出て猛さんに迷惑が掛からないように、距離を置いて歩くようにした。当然、手を繋いだり、腕を組んだりといったことは交際時にはできなかった。
しかも、遠征で全国を飛び回るため、会える日はごくわずか。不安になってもおかしくない状況だが、佐知子さんには猛さんを信じ続ける、ある理由があった。たとえどんなに忙しくても欠かすことなく連絡をくれる猛さんに、佐知子さんは、その愛の真剣さを感じていたのだ。
猛さんは、遠征先でも毎日、佐知子さんに電話をし、電話代とルームサービス代で当時20万円も払っていたそう。また、翌日5時半起きの時でも時間ギリギリまで電話していたことも。一見、恋愛にはいい加減そうに見える猛さんだが、意外にも、真面目な一面を持っていた。
そして順調に交際が続き、2年が過ぎた頃、佐知子さんは結婚を意識するようになり、両親に猛さんとの交際を両親に伝えた。
すると父は、「いいか? 相手はプロ野球選手だぞ。しかもあの愛甲だ。きっと遊ばれて捨てられるに決まっている」と言った。
常に女性ファンに囲まれている人気ぶり、さらにプロ入り前の暴行事件。父には猛さんのやんちゃで不良っぽいイメージが残っていた。猛さんの気持ちを信じていたものの、父の言葉は佐知子さんの心を動揺させた。
「プロ野球で成功したい」覚悟の言葉に、妻は…
その頃、プロ4年目の愛甲選手は、正念場を迎えていた。入団した時にはピッチャーだったが、結果を残すことができず、バッターに転向していた。この挑戦が成功しなければ、もう後がない……まさに崖っぷちの状態だった。
そんなある日、猛さんは佐知子さんを呼び出しこう告げる。
「結婚はできない」
結婚を意識していた佐知子さんにとって、思いもよらないものだった。
続けて、
「今は野球に集中したい。野球選手として1人前になって自信がついたら、佐知子と家庭を持つ」(猛さん)
“プロ野球で成功したい”という覚悟の言葉だった。佐知子さんもその思いを受け止めた。
バッターとして何としても成功したいと強く思った猛さんは、チームの先輩で三冠王の落合博満選手に打撃の指導をあおぎ、猛練習を重ねた。その結果、プロ6年目、ついに打者として1軍のレギュラーに定着し、シーズンオフの契約更改で、当時プロで一流選手の証とされた年俸1000万円を手にすることができた。
そして、猛さんの約束通り、2人は結婚し、2人の子宝にも恵まれた。夫・猛さんは、ロッテの主力として活躍を続け、年俸も29歳で5000万円を超える選手となった。
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