トランプの貿易戦争は欧州経済最大のリスク

共通ルールを掲げる欧州当局者との溝は深い

ユーロ圏にとって、知的財産権侵害をめぐる米中間の制裁と報復の間接的な影響も気掛かりだが、米国とEU(欧州連合)の摩擦の激化という直接的な脅威も増している。

EUは米国が鉄鋼・アルミニウムの追加関税の適用除外を解除したことを受けて、6月1日、WTO(世界貿易機関)の紛争解決手続きを開始、WTOのセーフガード協定のリバランス制度に基づく対抗措置を講じると発表した。米国の輸入制限から生じる想定損失額64億ユーロ相当のうち、28億ユーロ相当に7月1日から関税を課す。さらに3年以内かWTOの紛争解決手続きで違反が認定された段階で36億ユーロ相当の関税を課す方針だ。

対話による解決への期待はしぼんでいる

米国とEUは、合わせて世界のGDPの5割を占める巨大市場で、双方向の直接投資を通じて深く結び付いているため、本格的な対立は避けられると期待されていた。EUとの貿易不均衡は、トランプ大統領が問題視する財貿易の収支に限れば米国の赤字が1530億ドルと大きいが、サービス貿易と所得収支は米国が黒字。EUとの取引で、米国の黒字の源泉となっているのは金融サービス、特許や著作権など知的財産権等の使用料、ビジネスサービスなど。所得収支の黒字は主に直接投資の収益だ。その結果、経常収支は142億ドルの米国側の黒字となっている。

米国と中国との関係はどうか。対中貿易でも、サービス貿易は米国が黒字だが、財貿易の赤字に比べてはるかに小さい。所得収支も米国側が赤字であるため、財貿易の赤字と経常収支の赤字の差は小さい。

確かに、経常収支のベースで見ても、ドイツ向けは米国側の赤字が大きいなど、国別、業種別に不均衡はある。しかし、全体で見ればEUと米国の間では「ウィン-ウィン」関係が成立してきたと考えていいだろう。米国の輸入制限は、米国の消費者の不利益になるほか、米EU間の結び付きの強さを考えると、EUとの摩擦が激化し、EUとその中核のユーロ圏経済にブレーキがかかることになれば、大西洋をまたいで活動する米国の企業収益にもマイナスに働くだろう。

しかし、米国とEUの問題が対話によって解決されるという期待は、しぼむ一方だ。6月8~9日のG7(主要7カ国)首脳会議では、ドイツ政府が配信した写真が象徴したように、米国とほかの参加国との溝が浮き彫りになった。

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