トランプの貿易戦争は欧州経済最大のリスク

共通ルールを掲げる欧州当局者との溝は深い

トランプ米国大統領とその他の参加国首脳との対立が鮮明になったカナダでのG7首脳会議(写真:Bundesregierung/Jesco Denzel/Handout via REUTERS)

ECB(欧州中央銀行)が6月14日の政策理事会で、年内の国債等資産買い入れ(量的緩和)の停止を決定したことを受けて、外国為替市場ではユーロ安ドル高が進んだ。

ユーロ安は、マリオ・ドラギ総裁が会見で「経済が強さを呈すると同時に不確実性は増している」と、慎重姿勢を示したことへの反応だ。資産買い入れの縮小、停止には「データによってわれわれの中期インフレ見通しが確認されること」という条件をつけた。利上げについても、市場では早ければ来年半ばとみられていたが、「2018年夏まで、あるいはインフレ動向が現在予想している持続的な調整の軌道に沿って確実に推移するために必要なかぎり、政策金利を現在の水準に維持する」とし、早期利上げの可能性を排除した。

ECBの緩和縮小に留保、保護主義の脅威を警戒

ECBが6月理事会で表明した「年内の資産買い入れ停止、2018年秋以降の利上げ」という基本方針は、2018年に入ってからの成長鈍化は「ソフトパッチ(一時的な鈍化)」であるという認識に基づく。

今回の理事会に合わせて公表した経済見通しでは、2018年の実質GDP(国内総生産)成長率は、下方修正されたとはいえ、前年比2.1%。2019年も同1.9%で、1%台半ばと推計される潜在成長率を超える。インフレ率は、2018年、2019年ともに3月時点の前年比1.4%から1.7%に上方修正された。原油価格の前提条件の上方修正と為替相場のユーロ安方向への修正による面も大きいが、「2%以下でその近辺」というECBの目標圏に大きく近づいた。

こうした経済見通しから乖離するリスクとして、ECBが最も警戒するのは「グローバルな要因にかかわる不確実性、とりわけ保護主義の脅威の高まり」(ECBの6月政策理事会声明文)。つまり、米国のドナルド・トランプ政権の通商政策が引き起こす制裁と報復の広がりだ。

ドラギ総裁は、理事会後の記者会見で、経済見通しが考慮した「実行済み」の貿易制限措置の「直接的」影響に限れば、ごく限定的。だが、貿易制限と報復が拡大すれば影響はより深刻になる、と述べている。

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