理系の大学院生の多くがそうであるように、大山さんも研究が忙しく、インターンシップにはまったく参加できなかった。3月になって研究もひと段落つくと、意気込んで30社にエントリーした。しかし、志望企業はどこも大手で競争が激しく、10社でES(エントリーシート)が通過したものの、面接まで進んだのは5社。6月の1週目には、すべての選択肢が消えてしまった。
なぜうまくいかなかったのか。柚木アドバイザーは「研究で忙しく、就活の場数を踏めなかったのもありますが」と前置きしつつ、「自分の専攻を生かして、『できる』ベースだけで企業を選んでいたためです」と分析する。
理系の学生にとって、研究してきた専門分野は当然強みではある。しかし、「何ができるか」だけで企業を選ぶと、「何をやりたいか」を考える余地がなくなり、選択肢も限られてしまうという。
「例えば生物を専攻していても、第2志望群でIT分野まで視野を広げれば、ぐんと内定に近づきます。しかし、『自分はIT分野の専門ではないから』と可能性を絶ってしまうと、どうしても就活は難しくなる」(柚木アドバイザー)。
視野を広げて志望群を追加していく
好きなことだけを仕事にしたい、と考えた文系の会田さんとは、真逆の発想と言える。
大山さんは他にどのようなことに関心を持てるのか。柚木アドバイザーが気になったのは、植物の研究を続けてきたモチベーションだ。これについて大山さんは「ラボでの意見交換が楽しいのです。研究開発はチームで課題を解決していくのが醍醐味」と語った。
柚木アドバイザーはこれだと思ったという。「『チームでの課題解決』という軸が、企業紹介の幅を大きく広げました。そこには論理的思考や人とのコミュニケーション力も含まれる。私はIT企業のシステムエンジニア(SE)、コンサルティング企業、そして店舗の接客業、の3業種に向いていると判断しました」
大山さんも「その道も確かにありますね」と納得して、現在はSEを中心に選考に臨んでいるという。
昨年度に柚木アドバイザーが支援した、理系の女子大学院生が、今年の4月に新社会人となった。研究内容は大山さんと同じ生物系だったが、就職ではIT業界の道を選んだ。入社後に聞いた言葉が印象的だったという。
「彼女が『社内イベントが充実していて楽しい。仕事は何をするかよりも、誰とするかが大事ですね』と言ったのです。専門分野など『できること』が軸の就活生は、「働く人」などもっと抽象的な軸を広げて企業を見てみると、視界が開けるかもしれません」(柚木アドバイザー)
就職みらい研究所の調査「就職白書2018」では、2018年卒の新卒採用で、50.9%の企業が計画した採用目標数を達成できなかったと回答した。大きな目で見れば、企業は圧倒的に人材不足で、内定の余地は十分にある。一方で、7月に入れば、募集を締め切る企業が増えてくるのも現実だ。焦ることなく、でも着実に、発想と行動を切り替えて、満足のいく内定にたどり着いてほしい。
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