トヨタが悲願のル・マン初優勝に至った裏側 19回の挫折を経て速さと信頼性を勝ち取った

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GRスーパースポーツコンセプト(写真:トヨタグローバルニュースルーム)

トヨタガズーレーシングが、ル・マン24時間レースをはじめとするWECに参戦する理由は“ル・マンに勝つ”ことも重要だが、その根底には「ハイブリッド技術を育てる」「究極の安全性能と突出した走行性能の両立」という思いがある。友山プレジデントは「それらが形として世に出るまでは辞められません」と語っている。その一つが東京オートサロンで世界初公開、ル・マンでもお披露目された「GRスーパースポーツコンセプト」である。

自動車業界は100年に1度と言われる転換期が訪れており、どのメーカーも電動化に向けて舵を切り始めている状況。ハイブリッドのパイオニアであるトヨタは、環境対応や省エネのイメージが強いハイブリッドをドライビングファンのために用いることを次の一手にした。

WECで培った技術やノウハウはすでに量産のハイブリッドシステム/エンジンに間接的なフィードバックはされているのだが、トヨタガズーレーシングを率いるGRカンパニーとしては何も形になっていないのも事実だ。さらに言うと、量産モデルのハイブリッドとWECのハイブリッドには関連性がない……と思っている人も多い。

その象徴がGRスーパースポーツコンセプト

その誤解を解くためにも、WECで培った技術を“直接”フィードバックするような“象徴”が必要だった。それがGRスーパースポーツコンセプトに与えられた役割だ。

友山プレジデントはGRスーパースポーツコンセプトについて、「近い将来市販化します」と明言、更に「実はこのモデルでWECに参戦したいと思っています。市販する前にあの姿で出ないと……ね。それが実現するとレースをやりながらユニットが改善され、結果的に商品もよくなっていきます」とも話している。

実は2020年以降のトップカテゴリーのマシンのために「Hyper Car GT Prototype」と呼ばれる新レギュレーション案が出ているが、果たしてGRスーパースポーツコンセプトはその規定に合致する市販車として登場するのだろうか? トヨタがル・マン24時間耐久レースで悲願の初優勝を果たしただけに、期待は俄然高まっている。

山本 シンヤ 自動車研究家

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やまもと しんや / Shinya Yamamoto

自動車メーカー商品企画、チューニングメーカー開発を経て、自動車雑誌の世界に転職。2013年に独立し、「造り手」と「使い手」の両方の気持ちを“わかりやすく上手”に伝えることをモットーに「自動車研究家」を名乗って活動をしている。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

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