そこで2018年はマシンのさらなるアップデートはもちろんだが、チームオペレーションの信頼性を高めるために、さまざまな訓練が行われたという。問題を顕材化/見える化、品質は工程で作り込む、ムダ・ムラ・ムリを徹底的になくすなどがあげられるが、実はこれは「トヨタ生産方式」そのものでもある。つまり、基本中の基本に立ち返ったとも言えるかもしれない。
また、現在トヨタガズーレーシングはWEC(世界耐久選手権)以外にWRC(世界ラリー選手権)、ニュルブルクリンク24時間耐久レースにワークス参戦している。このうちル・マン24時間耐久レースが含まれるWECは「ハイブリッド技術を鍛える場」として活用されており、ポルシェが撤退した今年も継続して参戦している。WEC、WRC、ニュル24時間耐久レースとも、それぞれの良い部分をトヨタ内で共有している。
例えばWRCでマキネンが大切にしているドライバー視点やニュルで大切にしているスタートラインまで改善を続ける/何があってもゴールまで走り切る……と言った気持ちなど、改めて学び直したそうだ。
ボロ負けから始まったGRスピリット
友山プレジデントは「WECは昔のトヨタレーシングが発端でF1をやっていた部隊が担当、そこからGRへと繋がっています。そういう意味では、去年のル・マンでボロ負けした所から“GRスピリット”が入り始めたと言ってもいいかもしれませんね」と語る
2018年のル・マン24時間の挑戦は、豊田社長が常日頃語っている「心を一つに」の究極の実践でもあった。
今年のル・マンは長年トヨタが挑みながら倒すことができなかったライバルであるポルシェは参戦していない。そんなことから「トヨタは勝って当たり前」と言うような雰囲気になっていたが、そんな簡単に勝てるほどル・マンは甘くない。ちなみに今年は致命的なトラブルや接触などはなかったが、ペナルティや燃料系のトラブルによるスローダウン(7号車)などが起こるなど、2016年の悪夢を知っているだけに最後まで気を抜けないレース展開だった。
一般的には耐久レースはゴールするためには「マージンを残して」「無理をしない」「序盤で何かあっても逆転のチャンスがある」と思われているが、それは過去の話。現在の耐久レースはスタートからゴールまで全開かつミスなく走らなければ勝つことはできない。
そういう意味では、むしろライバルがいたほうが楽だったかもしれない。見えない敵と戦うために、チームはもの凄いプレッシャーだったと思う。それを踏まえると、トヨタは“自分自身”に勝ったと言ってもいいだろう。
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