キヤノンを急襲する一眼レフカメラの変調 年間出荷台数は初のマイナス。業績予想も引き下げ

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事態が深刻なのは、昨年9月末に発売し、前期は3カ月強しか貢献しなかったミラーレス一眼カメラの販売が今年は通年化するにも関わらず、レンズ交換式カメラの販売台数合計が減少することだ。

従来の一眼レフカメラが苦戦したとしても、市場成長が続くミラーレスの売り上げが大きく伸びれば補えたかもしれないが、そうはならなかった。

特に厳しいのは欧州と中国

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国内で人気の「EOS 70D」

一眼レフカメラの減速が顕著なのは、欧州と中国。田中副社長は「景気の停滞が長期化し、一種の贅沢品として購入が後回しにされている。流通の仕入れ数量も減っている」と説明した。

海外とは対照的に、日本国内では今年1~8月の累計で一眼レフ出荷台数が前年比36.3%増(カメラ映像機器工業会統計)と絶好調。そのためキヤノンは海外での一眼レフの減速を「景気停滞の長期化による一時的なもので、いずれは戻ると思う」(田中副社長)としている。

低価格のコンパクトデジカメがスマートフォンに代替されるという構造変化に、一眼レフの変調という追い打ちが重なっているキヤノン。利益柱の一眼レフを早期に再成長軌道に戻せるかどうかが、来期以降の業績動向の鍵を握る。

(写真:尾形文繁)

島 大輔 『会社四季報プロ500』編集長

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しま だいすけ / Daisuke Shima

慶応義塾大学大学院政策メディア研究科修士課程修了。総合電機メーカー、生活実用系出版社に勤務後、2006年に東洋経済新報社に入社。書籍編集部、『週刊東洋経済』編集部、会社四季報オンライン編集部を経て2017年10月から『会社四季報』編集部に所属。2021年4月より『会社四季報プロ500』編集長。

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