筆者は以前、トヨタ「86」にZFのショックアブソーバーが採用された際に、チーフエンジニア(当時)の多田哲哉さんはこう語っていた。
「ZFにはトーマスさんというセットアップの職人がいて、われわれが『このような足にしたい』と要望すると2~3時間でセットアップしてくれました。実際に乗ってみるとわれわれが要望したとおりに仕上がっていてビックリしました」
また、クロスオーバーSUVのC-HRにもZFのショックアブソーバーが全車に採用されるが、。その理由は開発コンセプトのひとつ、世界のどの道でも通用する「意のままの走り」を実現させるために必要なアイテムだったのだ。
そんな「神の声」を持つ職人がいて技術の伝承やZFイズムが脈々と受け継がれるのはもちろん、培った技術やノウハウが共有されていることが大きいのだろう。まさにアナログとデジタルの融合である。
メガサプライヤーとしての応用力
もうひとつは日本ではあまり知られていないが、ZFはクルマ全体のさまざまアイテムにかかわる「メガサプライヤー」でもある。
ショックアブソーバー以外に、最も有名なトランスミッションをはじめとして、さまざまな機能部品の開発・製造を行う。そのため、単品での良しあしだけでなくクルマ全体の中で「ショックアブソーバーの役割」を俯瞰的にとらえて開発できる。
実はクルマに装着されるアイテムの中で評価の高いブランドはZFと似たような考え方を持っている。たとえば、シートで有名な「レカロ」はかつて車体作りにもかかわっていたし、タイヤで有名な「ミシュラン」はかつてシトロエンを傘下に従えていたこともあった。
ZFが開発を進めているのは電子油圧式車高調ダンパー「eLEVEL」である。車高調整機能というとエアサスペンションが有名だが、構造や価格の問題も多い。しかし、これは油圧でスプリングシートを上下させるため、コイルスプリングをそのまま使えて安価な上にエアサスよりも早い作動も可能だという。
「まだ開発は始まったばかりですが、メーカーの要求に合わせて提案していきたいと思っています。乗り降りを楽にするだけでなく、高速では車高が低いほうがクルマは安定するうえに全面投影面積も下がるため、結果として燃費にも効く……と言ったようなメリットも訴求していきたいですね」(山崎さん)。
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